「動画制作は、社内で作ったほうが安いですか。それとも外注したほうが安いですか」——この質問に、制作本数や担当者の給与を聞かずに答えることはできません。

外注なら見積書の金額が見えます。一方、内製には担当者の給与、社会保険、ソフト、機材、確認や修正にかかる時間が含まれています。内製が無料に見えるのは、費用が発生していないのではなく、別の予算項目や担当者の時間に移っているだけです。

この記事では、動画制作の内製と外注を比べるときの計算方法を整理します。市場全体の料金相場はSNS動画制作の費用相場に譲り、ここでは「自社で作ると本当はいくらかかっているか」「外注すると社内にどの作業が残るか」を同じ表に載せる方法に絞ります。

この記事の結論

  • 内製費は給与だけでなく、会社負担分・ソフト・機材・管理・確認・手戻りまで含めて計算する
  • 外注費は見積金額だけでなく、社内の企画・素材準備・確認・修正の工数を足して比較する
  • 1本だけなら外注、毎月一定本数を作り続けるなら内製またはハイブリッドが有利になりやすい
  • 高い専門性・短納期・権利処理・成果責任が必要な場合は、単価だけでなく失敗コストまで見る

内製と外注、比較する費用の範囲が違う

最初に、比較する対象をそろえます。内製と外注は、同じ「動画1本」でも含まれる作業が異なるからです。

費用・作業 内製で発生するもの 外注で発生するもの
企画 担当者の企画・会議・社内調整時間 企画・構成費、ディレクション費
素材準備 商品情報、写真、台本、撮影準備 素材整理や撮影準備の社内対応+追加素材費
撮影 社員の拘束、機材、場所、移動 撮影スタッフ、機材、スタジオ、交通費
編集 担当者の編集時間、ソフト、PC、保存容量 編集費、音楽・素材・ナレーション費
確認・修正 上司・関係部署の確認時間、手戻り 修正回数を超えた追加費用+社内確認時間
公開・運用 書き出し、投稿、レポート、差し替え 納品形式・短尺版・広告転用の追加費用+社内投稿

比較の単位もそろえてください。「15秒動画1本」ではなく、企画から納品まで、何本を、何営業日で、どの媒体に、何回修正し、どの権利範囲で使うかまで固定します。外注の見積書の読み方は、動画制作会社の選び方|見積もりで必ず確認すべき7項目で詳しく扱っています。

内製の実質コストを計算する式

内製の費用は、担当者の月給を勤務時間で割るだけでは足りません。給与以外の会社負担と、制作に使った設備・時間を含めます。

内製の実質コスト = 人件費 + 会社負担分 + ソフト・機材 + 外注素材費 + 管理・確認工数 + 手戻り・機会費用

1時間あたりの人件費を作る

まず、担当者の時間単価を作ります。計算に使うのは手取り額ではなく、会社が負担する年間総額です。

実務時給 = 年間総人件費 ÷ 年間の実働可能時間

年間総人件費には給与・賞与だけでなく、会社負担の社会保険、通勤費、福利厚生などを含めます。厚生年金は事業主と被保険者が折半する制度ですが、健康保険料率などは加入制度や地域によって異なります。固定の「給与の何割」と決め打ちせず、自社の給与台帳や経理データで確認してください。

分母の実働可能時間にも注意が必要です。年間の所定労働時間をそのまま使うと、会議・営業・休暇・教育・待機時間まで制作可能時間として扱ってしまいます。動画制作に使える時間を実測できるなら、その数字を使います。

2人以上が関わるなら、役割ごとに積み上げる

企画担当、撮影担当、編集担当、確認者の時間単価が同じとは限りません。役割ごとに次のように計算します。

役割 時間単価 制作に使った時間 費用
企画・構成 自社で計算 __時間 単価×時間
撮影・素材準備 自社で計算 __時間 単価×時間
編集 自社で計算 __時間 単価×時間
確認・承認 確認者ごとに計算 __時間 単価×時間
投稿・レポート 担当者ごとに計算 __時間 単価×時間

特に見落としやすいのが、編集担当者以外の確認時間です。営業、広報、法務、事業責任者が15分ずつ確認していても、関係者が多ければ1本あたりの費用になります。

3. ソフト・機材は月額と減価償却に分ける

編集ソフト、素材サイト、クラウドストレージ、フォント、音源、パソコン、カメラ、照明、マイク。内製に必要な設備は、動画を作らない月にも費用が発生します。

管理会計では、次のように動画制作へ配賦します。

1本あたりの設備費 = 月額固定費 ÷ その月に作った本数 + 機材の月間利用分

機材は購入金額を初月に全額入れるのではなく、利用期間や稼働時間に応じて配分すると比較しやすくなります。税務上の減価償却と、社内の意思決定用のコスト配賦は目的が違うため、会計処理は税理士に確認してください。国税庁も、減価償却資産は使用可能期間にわたって取得費を配分する考え方を説明しています。

外注の実質コストを計算する式

外注は「見積書の金額=制作費」と考えがちですが、発注側の作業がゼロになるわけではありません。

外注の実質コスト = 外注見積額 + 社内の企画・素材準備・確認工数 + 追加修正 + 納品形式・権利の追加費用

外注しても残る社内作業

  • 目的、ターゲット、訴求、掲載媒体を決める
  • サービス情報、ロゴ、商品画像、素材を整理する
  • 社内の関係者から確認コメントを集め、一本化する
  • 法務・薬機・景表法・ブランド表現を確認する
  • 納品された動画を各媒体へ入稿し、成果を確認する

「丸投げできる」という前提で見積もりを比べると、外注後の社内工数が想定より大きくなります。反対に、発注側で要件が整理されていれば、外注先の企画・進行工数を抑えられることもあります。

追加費用が出る項目を先に固定する

追加になりやすい項目 確認する質問
修正 無料修正は何回か。回数は全体か、工程ごとか
納品形式 縦型・正方形・横型、字幕あり・なしを含むか
素材 写真・動画・音源・ナレーションは誰が用意するか
権利 広告利用、期間、媒体、地域、二次利用の範囲はどこまでか
元データ 編集プロジェクトや素材データを受け取れるか
追加本数 短尺版や冒頭違いを追加するといくらかかるか

初期費用が安くても、広告用の短尺版や別の比率を書き出すたびに追加費用がかかれば、運用期間全体では高くなる可能性があります。見積書の「一式」「別途」の中身まで確認してください。

仮想ケースで比較する:同じ動画1本を作る場合

ここでは計算方法を示すため、仮の条件で比較します。以下の金額は市場相場でも、pitattoの実績でもありません。自社の数字に置き換えて使ってください。

仮に、担当者の実務時給を4,500円、確認者の実務時給を5,500円とします。内製では、企画・台本・撮影・編集・確認に合計29時間かかり、ソフトや素材の配賦を8,000円、確認者の時間を3時間使うとします。

項目 計算 仮の費用
企画・撮影・編集担当 4,500円×29時間 130,500円
確認・承認 5,500円×3時間 16,500円
ソフト・素材・機材配賦 1本分 8,000円
内製の仮合計 155,000円

同じ成果物を外注し、見積額が110,000円だったとします。外注後の社内確認に3時間、素材準備に2時間、公開作業に1時間かかるなら、社内工数は6時間です。担当者と確認者の内訳を入れて、外注の実質コストを計算します。

項目 計算 仮の費用
外注見積額 110,000円
素材準備・公開 4,500円×3時間 13,500円
社内確認 5,500円×3時間 16,500円
外注の仮合計 140,000円

この仮ケースでは、見積書だけを見ると外注が110,000円、内製が分かりにくい状態です。しかし同じ条件にそろえると、外注の実質コストは140,000円、内製は155,000円になり、差は15,000円です。ここに納期、品質、担当者の本来業務、修正リスクを加えると、判断はさらに変わります。

この数字をそのまま自社の判断に使わないでください。本数、担当者の実務時給、制作時間、確認人数、外注範囲を自社の値へ入れ替えることが重要です。

内製が向いているケース、外注が向いているケース

内製が向いている 外注が向いている
本数 毎月一定本数を継続して作る 年に数本、案件ごとに内容が違う
スピード 小さな差し替えをすぐ出したい 納期を決めて一度に完成させたい
内容 社内情報や日々の現場を活かす 企画・演出・撮影・編集に専門性が必要
体制 担当者と確認ルールがすでにある 担当者を新たに採用・教育する余裕がない
品質管理 テンプレート化できる ブランド品質・権利・広告表現を管理したい

内製の最大の利点は、動画そのものだけでなく、企画や顧客理解が社内に蓄積することです。一方で、担当者一人に企画・撮影・編集・投稿を集中させると、退職や繁忙期に制作が止まります。

外注の利点は、専門スキルと制作体制を必要なときに借りられることです。ただし、外注先に目的やブランドを理解してもらうための初期コミュニケーションは必要です。外注すれば社内の負担がゼロになるわけではありません。

二択ではなく、ハイブリッドで分ける

実務では、内製か外注かを一つに決めるより、工程ごとに分けたほうが合理的です。

工程 社内で持つ例 外注する例
企画 顧客の悩み、商品情報、社内の優先順位 広告用の構成、フック、演出案
素材 日々の現場、社員、商品写真 撮影、生成素材、モデル、音楽
編集 軽微な字幕・切り抜き・投稿用加工 広告動画の本編集、複数パターン
運用 投稿、配信、成果の確認 改善案、クリエイティブの追加制作

例えば、社内で企画と素材の優先順位を決め、編集だけを外注する方法があります。逆に、社内の素材を渡して、広告用の構成・編集・媒体別の書き出しを外注することもできます。

撮影やキャスティングを持たずに動画を作るサービスを選べば、外注でも撮影日程・機材・出演者の調整を減らせます。pitattoでは、オリジナル楽曲付きの広告動画を75,000円(税込)〜、最短7日で制作しています。素材や撮影、キャスティングを用意せずに進められる設計です。

ハイブリッド
実写素材とオリジナル楽曲を組み合わせた制作例。社内素材を活かしながら、編集・音楽の工程を外部へ分けるハイブリッドのイメージです

もちろん、実在の店舗やスタッフ、作業風景そのものを見せることが成果に直結する場合は、撮影体制を持つ制作会社や内製チームのほうが合います。外注先の選び方は、金額だけでなく、必要な工程を持っているかで判断してください。

内製・外注の判断を間違えやすい5つのポイント

  1. 給与だけで内製費を計算する:会社負担分や確認者の時間が抜ける
  2. 外注の見積額だけを見る:素材準備や社内確認が残っている
  3. 1本だけで判断する:継続本数と固定費の配賦が反映されない
  4. 同じ成果物だと思い込む:尺、比率、字幕、権利、修正回数が違う
  5. 失敗時の費用を入れない:手戻り、公開延期、機会損失、差し替えが発生する

特に最後の「失敗時の費用」は、最初から正確に金額化しにくい項目です。だからこそ、重要な広告や採用動画では、最安値だけでなく、確認体制・権利処理・修正条件・納期の確実性を比較します。

制作期間を含めて社内外の工程を比べたい場合は、広告動画の制作期間はどれくらいかかるかも参照してください。AI動画と実写の工程差は、AI動画 vs 実写|使い分けの判断基準で整理しています。

比較表に自社の数字を入れる

最後に、意思決定用の最低限の表を作ります。空欄を埋めると、内製と外注を同じ基準で比較できます。

項目 内製 外注
年間・月間の制作本数 __本 __本
1本あたりの制作時間 __時間 社内__時間
1時間あたりの会社負担コスト __円 社内担当__円
ソフト・機材・素材 __円 見積に含む/__円
外注費 __円
修正・追加・権利 __円 __円
納品までの日数 __日 __日
1本あたり実質コスト __円 __円

ここで大切なのは、表を一度作って終わりにしないことです。まず3本分を仮入力し、実際にかかった時間と差があるか確認します。内製の工数が予想より増えた場合は、テンプレート化や一部外注を検討します。外注の社内工数が増えた場合は、依頼書や確認窓口を見直します。

まとめ:安さではなく、同じ成果物の実質コストで決める

動画制作の内製と外注を比べるときは、次の順番で確認します。

  1. 同じ成果物の条件を決める(本数、尺、媒体、修正、権利、納期)
  2. 内製の実務時給を、会社負担分と実働可能時間から計算する
  3. 内製の企画・撮影・編集・確認・投稿をすべて時間に換算する
  4. 外注費に、外注後も残る社内工数と追加費用を足す
  5. 本数・納期・品質・失敗リスクを含めて、内製・外注・分業を選ぶ

内製が安い会社もあれば、外注が安い会社もあります。違いを生むのは、担当者の実務時給、制作本数、テンプレートの有無、確認体制、そして動画を作る目的です。

見積書の金額だけで判断せず、社内の時間も同じ通貨に換算してください。比較表に3本分の実績を入れれば、自社にとっての内製ラインと外注ラインが見えてきます。

参考にした公式情報