採用動画を作れば、応募者が増える——。そう言い切ることはできません。動画の成果は、採用する職種、募集条件、求人ページ、応募導線、配信先、採用市場の状況などにも左右されるからです。

採用動画でまず決めるべきなのは、豪華な映像を作ることではなく、どの応募者に、仕事の何を伝え、視聴後に何をしてもらうかです。そこが決まれば、必要な撮影、社員インタビュー、編集、権利処理の範囲が見えてきます。

なお、pitattoには採用動画の制作実績や応募成果の公開事例はありません。この記事は自社の採用事例を紹介するものではなく、採用担当者が採用動画を企画・発注する前に使える判断材料をまとめたガイドです。応募数や採用率を保証する内容でもありません。

この記事の結論

  • 採用動画は「会社を知ってもらう」「仕事内容を理解してもらう」「応募ページへ進んでもらう」など、目的を1つ決めてから構成する
  • 費用は完成尺だけでなく、撮影日数、出演者、ロケ地、編集密度、納品本数、権利、修正回数で変わる
  • 社員インタビューは「社風はどうですか」ではなく、仕事の具体や入社後のイメージが伝わる質問にする
  • 見積もりは金額だけでなく、撮影範囲、納品形式、利用期間、二次利用、元データ、追加費用を比較する
  • 採用成果を保証する表現や、自社にない採用動画実績を記事・提案資料へ掲載しない

採用動画を作る前に、目的を1つ決める

「会社の魅力を全部伝えたい」と考えると、仕事内容、社長メッセージ、社員の声、福利厚生、オフィス風景を1本に詰め込みがちです。しかし情報量が増えるほど、応募者が何を理解すればよい動画なのかがぼやけます。

最初に、採用動画の役割を次のどれかに寄せます。複数を含める場合も、主目的と副目的を分けておくと構成を決めやすくなります。

主目的 主な対象者 動画で伝えること 視聴後の行動
認知 まだ会社を知らない人 何の会社で、どんな職種を募集しているか 採用ページを見る
仕事内容の理解 求人を見つけた人 仕事の流れ、関わる人、難しさ、やりがい 求人票・募集要項を読む
社風・働き方の理解 応募を迷っている人 意思決定の仕方、チームの関わり方、働く環境 他社との違いを比較する
応募への後押し 応募を検討している人 募集職種、条件、選考の流れ、応募先 応募フォームへ進む

例えば営業職の採用なら、「明るい会社です」だけでは仕事内容が分かりません。誰に何を提案し、どのように顧客と関わり、入社後にどんな支援を受けられるのかを、具体的な場面で見せる必要があります。

逆に、認知を目的にした短い動画へ、給与制度や選考フローをすべて入れる必要はありません。詳しい情報は採用ページへ渡し、動画では「自分に関係がある仕事か」を判断できる材料に絞ります。

採用動画の費用は、完成尺ではなく制作条件で決まる

採用動画の費用を「1分いくら」とだけ考えるのは危険です。同じ尺でも、社員1人のインタビューを編集するだけなのか、複数拠点を撮影して図解やナレーションを加えるのかで、必要な作業が変わります。

採用動画の実質費用 = 企画・構成 + 撮影・進行 + 出演者・ロケ + 編集・音響 + 権利処理 + 納品形式・派生版 + 修正・管理

項目 費用が増えやすい条件 見積もりで確認すること
企画・構成 複数職種、複数ターゲット、競合調査、絵コンテ ヒアリング、構成案、台本、進行管理の範囲
撮影・進行 複数日、複数拠点、複数カメラ、照明・音声スタッフ 撮影日数、拘束時間、スタッフ人数、交通費
出演者・場所 モデル、ナレーター、スタジオ、遠方ロケ、許可申請 出演料、利用期間、ロケ費、社員の出演調整
編集・音響 全編字幕、図解、モーション、ナレーション、整音 字幕の範囲、図解点数、BGM、ナレーション、MA
権利処理 広告配信、長期利用、複数媒体、既存楽曲、素材購入 利用媒体、期間、地域、第三者権利、更新料
納品・派生版 縦型・横型、字幕あり・なし、職種別、短尺版 納品本数、比率、解像度、データ形式、元データ
修正・変更 社内確認者が多い、構成確定後の変更、再撮影 無料修正の回数、範囲、追加単価、再撮影条件

見積もりを取る前に、次の条件を1枚にまとめてください。これを同じ内容で複数の制作会社へ渡せば、「安いのに必要なものが入っていない」という比較ミスを減らせます。

発注条件 記入例
採用する職種 法人営業/店舗スタッフ/エンジニアなど
想定する応募者 経験者/未経験者/新卒/地域の求職者など
主目的 仕事内容の理解、社風の理解、応募ページへの誘導など
掲載先 採用サイト、求人媒体、説明会、SNS、広告など
納品物 本編、短尺版、縦型版、字幕あり・なし、サムネイル
撮影条件 拠点数、撮影候補日、出演社員数、撮影できない場所
社内確認 確認者、法務・人事・現場責任者の承認順、期限
利用条件 利用媒体、期間、地域、広告利用、退職後の扱い

市場全体の料金相場を1つの数字で示すより、自社の条件に対する見積もりを比べるほうが実務的です。一般的な動画制作の費用内訳はSNS動画制作の費用相場|内訳と安く抑える現実的な方法、見積書の分解方法は動画制作会社の選び方|見積もりで必ず確認すべき7項目も参照してください。

応募者に伝わる採用動画の基本構成

採用動画は、会社の説明を順番に並べるだけでは伝わりません。応募者が動画を見ながら抱く「自分の仕事か」「自分にできそうか」「入社後を想像できるか」という疑問に、順番に答える構成にします。

パート 役割 入れる内容の例
1. 冒頭 自分に関係する動画だと分かってもらう 職種、対象者、仕事の場面、募集のテーマ
2. 仕事の具体 業務内容を想像してもらう 1日の流れ、顧客、使う道具、成果物、判断する場面
3. 社員の声 求人票だけでは分からない実感を補う 入社理由、担当業務、難しかったこと、支援されたこと
4. 働く条件 応募前の不安を減らす 研修、チーム体制、勤務地、勤務時間、評価の考え方
5. 次の行動 視聴後に迷わず進んでもらう 募集要項、職場見学、説明会、応募フォームへの案内

「アットホームな職場」「成長できる環境」といった抽象語は、それだけでは会社ごとの差が分かりません。抽象語を使うなら、必ず具体的な場面を添えます。例えば「相談しやすい」ではなく、「案件の初回提案前に、営業と専門担当が15分の確認会を行う」のように表現します。

良い面だけを並べる必要もありません。仕事の難しさや、入社後に覚えることを正直に伝えたほうが、応募者は自分に合うか判断しやすくなります。ただし、動画だけで雇用条件を説明し切ろうとせず、給与・勤務時間・休日・契約期間などの正式な情報は求人票や採用ページで確認できるようにしてください。

社員インタビューの質問は「感想」より「具体的な場面」

社員インタビューで「会社の魅力は何ですか」と聞くと、回答が「人が良い」「挑戦できる」「風通しが良い」に偏りやすくなります。質問は、応募者が入社後の仕事を想像できる順番に設計します。

目的 質問例 引き出したい内容
入社の背景 入社前はどんな仕事をしていて、何を決め手に応募しましたか 応募者が自分と重ねられる判断材料
仕事内容 最近担当した仕事を、依頼を受けてから完了するまで説明してください 業務の流れ、関係者、成果物
難しさ 最初に戸惑ったことと、慣れるまでに受けた支援を教えてください 入社後の壁と支援体制
やりがい 仕事の手応えを感じた具体的な場面はありますか 成果が生まれる場面と本人の価値観
チーム 意見が分かれたとき、チームではどのように決めますか 意思決定や相談の実態
応募者への情報 入社前に知っておきたかったことは何ですか 求人票だけでは伝わりにくい注意点

質問は事前に共有し、回答を準備してもらいます。台本を一字一句暗記してもらう必要はありませんが、公開できない数字、顧客名、個人情報、社内機密が含まれないかは人事や責任者が確認します。

避けたい質問と、置き換え方

避けたい聞き方 置き換える質問
会社の雰囲気はどうですか 最近、チームの助けを感じた具体的な場面を教えてください
どんな人が向いていますか この仕事で最初に身につけると役立つ行動は何ですか
プライベートは充実していますか 仕事と休みを切り替えるために、会社の制度や運用で助かっていることはありますか
家族や出身地について教えてください 仕事に必要な経験や、現在担当している役割を教えてください

採用広報の社員インタビューは採用面接そのものではありませんが、質問は仕事・役割・働き方に関係する内容に限定するのが安全です。厚生労働省も、採用選考では本籍・出生地・家族など、本人の適性や能力と関係のない事項を把握しないよう案内しています。応募者に見せる動画だからこそ、個人の私生活を面白さのために消費しない設計にします。

撮影前には、出演者へ次の内容を説明し、社内の同意・確認手続きを決めてください。

  • どの動画に出演するか、どの発言や映像を使うか
  • 採用サイト、求人媒体、SNS、広告、説明会など、どこで使うか
  • 利用期間・地域・二次利用の範囲
  • 退職・異動・発言内容の変更があった場合の扱い
  • 公開前に本人が確認できる範囲と、会社の最終判断者

撮影では「社員の自然さ」より、話しやすい進行を優先する

社員が緊張している状態で「自然に話してください」と言っても、自然な表情にはなりません。撮影前に質問を共有し、話す順番を決め、言い直しや休憩ができると伝えておくことが大切です。

撮影当日は、インタビュー映像だけでなく、仕事内容を補う映像も収録します。例えば、画面を確認する手元、道具を準備する様子、会議で資料を見る場面、顧客対応の準備などです。実際の顧客情報や個人情報が映り込む場合は、画面を差し替える、ぼかす、撮影場所を変えるなどの対応を先に決めます。

確認項目 撮影前に決めること
音声 空調・電話・機械音の影響、マイクの種類、予備収録の方法
背景 社名・顧客情報・個人情報・機密資料が映らない場所
出演者 質問内容、撮影時間、休憩、言い直し、公開範囲の確認
画角 採用サイト、求人媒体、SNS、広告で必要な縦横比
補足素材 仕事の手元、設備、チームのやり取り、通勤や休憩の扱い
公開前確認 人事・現場・法務・出演者の確認順と締切

見積もりで確認する10項目

採用動画の見積もりは、総額だけでは比べられません。次の項目を各社へ同じ条件で質問してください。特に「一式」「別途」「応相談」は、その場で内容を分解します。

  1. 企画:ヒアリング、ターゲット整理、構成案、台本、絵コンテのどこまで含むか
  2. 撮影:撮影日数、拘束時間、拠点数、スタッフ人数、機材、交通費
  3. 出演:社員出演か、モデル・ナレーターを手配するか、出演料と利用条件
  4. 編集:カット、字幕、図解、アニメーション、色補正、整音の範囲
  5. 納品:本数、尺、縦型・横型、字幕あり・なし、解像度、ファイル形式
  6. 派生版:職種別、拠点別、短尺版、SNS用などを何本作れるか
  7. 修正:無料回数、工程ごとか全体か、追加単価、再撮影の条件
  8. 権利:著作権、出演者、音楽、写真、フォント、広告利用、二次利用
  9. データ:撮影素材、音声素材、編集プロジェクト、字幕データを受け取れるか
  10. 進行:担当者、確認期限、納期、延期・キャンセル、実績掲載の可否

著作権は、制作費を支払っただけで発注者へ移るとは限りません。文化庁の著作権契約マニュアルでも、制作を依頼した側が著作権を取得するには契約で合意する必要があり、著作権法第27条・第28条の権利を含める場合は明記する必要があると説明されています。

完成動画を採用サイトへ載せるだけなのか、求人媒体やSNS広告へ転用するのか、社員の退職後も掲載するのかで必要な権利条件は変わります。契約書や発注書には、利用媒体、期間、地域、改変、二次利用、出演者の扱いを具体的に書いてください。

音楽も同様です。既存曲を広告目的の動画へ組み込む場合、作曲・作詞の著作権だけでなく、音源製作者やアーティストの権利が関係することがあります。JASRACも、広告目的の複製や広告配信について、利用方法に応じた確認・手続きが必要になると案内しています。制作会社へ任せる場合も、「採用サイトのみ」「求人媒体」「SNS投稿」「広告配信」のどこまで許諾済みかを確認してください。

見積書の比較方法をさらに詳しく確認したい場合は、動画制作会社の選び方を参照してください。内製と外注の社内工数まで比べる場合は、動画制作は内製と外注どちらが安いかも役立ちます。

pitattoの制作範囲について

現行のpitattoは、オリジナル楽曲付きの広告動画を75,000円(税込)〜、最短7日で制作するサービスです。この価格・納期は広告動画サービスの公開条件であり、採用動画の標準価格や採用成果を示すものではありません。採用動画を検討する場合も、目的、素材、撮影の有無、納品形式、利用範囲を確認したうえで、対応できる内容だけを提案します。

相談内容 確認すること
撮影なしで採用訴求を作りたい 支給素材、求人ページ、ロゴ、テキストから構成できるか
社員インタビューを見せたい 撮影素材を用意できるか、字幕・音声・利用同意をどう管理するか
採用サイトとSNSで使いたい 必要な比率、字幕版、短尺版、利用範囲を先に決める
職場やスタッフの実写が主役 撮影体制を持つ制作会社のほうが適する可能性を含めて比較する

pitattoの一般的な広告動画の制作例です。映像とオリジナル楽曲を組み合わせる表現方法の参考として掲載しています。採用目的で使えるかどうかは、実際の素材、募集職種、掲載先、権利条件によって判断が変わります。

アニメ調
採用動画の実績ではなく、pitattoの一般的な広告動画の制作例。採用目的で使う場合は、募集職種・素材・掲載先・権利条件を別途確認します

公開前に確認するチェックリスト

採用動画は公開したら終わりではありません。求人内容や出演者の状況が変わったときに、どの動画をどこまで差し替えるかも決めておきます。

  • 主目的、対象者、視聴後の行動が1枚にまとまっている
  • 仕事内容が抽象語だけでなく、具体的な場面で伝わる
  • 募集条件や選考フローは、最新の求人情報へリンクしている
  • 社員の出演範囲、利用期間、媒体、退職後の扱いを確認している
  • 顧客情報、個人情報、機密資料、第三者の著作物が映り込んでいない
  • 字幕あり・なし、縦型・横型、短尺版など必要な納品物が揃っている
  • 見積書の「一式」「別途」「応相談」の内容が明確になっている
  • 応募数や採用率を保証する表現を使っていない
  • 自社にない採用動画の制作実績や、架空の社員の声を掲載していない
  • 公開後の更新担当者と、更新が必要になる条件を決めている

まとめ:採用動画は「実績」より先に、伝える条件を決める

採用動画を初めて作るときは、次の順番で進めます。

  1. 採用する職種と対象者を決め、動画の主目的を1つに絞る
  2. 仕事内容、社員の具体的な経験、働く条件、次の行動を構成にする
  3. 社員インタビューの質問を仕事に関係する内容へ整理する
  4. 撮影、編集、納品、修正、権利の条件を同じ依頼書へ書く
  5. 複数の見積もりを総額ではなく、含まれる作業と利用範囲で比べる
  6. 応募成果を保証せず、求人情報と動画の内容を公開後も更新する

採用動画は、会社をよく見せるためだけの映像ではありません。応募者が仕事内容と働き方を理解し、自分に合うか判断するための情報です。実績の有無にかかわらず、まずは目的と条件を明確にし、必要な制作範囲だけを見積もりへ反映させることから始めてください。

参考にした公式情報