AIで広告動画を作ったとき、「AIで作りました」と書く必要はあるのでしょうか。この質問には、ひとつの答えがありません。日本の法律、配信する媒体の規約、広告としての表示ルールが、それぞれ別々の基準で動いているからです。
実務でつまずくのは、この3つを1つの問題として考えてしまったときです。「日本ではAI表記の義務がないから何も書かなくていい」と判断すると媒体の規約に違反し、逆に「とりあえず全部にAI表記を入れる」と、本来必要な広告表示(PR表記)が抜けたまま安心してしまいます。
この記事では、AI動画に表記が必要かどうかを、法律・媒体・広告の3階層に分けて整理します。YouTube、TikTok、Meta(Facebook・Instagram)、Google広告の公式規約をもとにした判定早見表と、公開前チェックリストを用意しました。海外配信がある場合に効いてくるEU AI Actの適用開始にも触れます。
情報更新日:2026年9月7日
この記事の結論
- 日本の法律に「AI生成物である」と表示する一般的な義務はない。ただし義務がないことと、表記しなくてよいことは別
- 表記が必要かどうかを実際に決めているのは、多くの場合は法律ではなく配信媒体の規約
- 判断の分かれ目は「AIを使ったか」ではなく「実在の人物・場所・出来事について、視聴者が現実と誤解しうるか」
- YouTube・TikTok・Metaは、写実的で誤解を招くAI生成・改変コンテンツに開示を求めている。未開示にはラベルの強制付与、削除、広告却下などの措置がある
- 選挙・政治・社会問題に関する広告は、Meta・Googleとも別枠の厳しい開示ルールがある
- AI表記と、ステマ規制に基づく広告・PR表記はまったく別のルール。片方を満たしても、もう片方は残る
- EU向けに配信するなら、EU AI Act第50条の透明性義務が2026年8月2日から適用されている
「AI表記が必要か」は、3つの別々のルールで決まる
まず全体像を押さえます。AI動画の表記をめぐる論点は、次の3階層に分かれています。それぞれ、判断する主体も、違反したときに起きることも違います。
| 階層 | 誰が決めるルールか | 守らなかったときに起きること |
|---|---|---|
| 法律・行政のルール | 国・行政機関(日本では消費者庁、文化庁など。海外ではEU、中国、韓国など) | 行政処分、課徴金、損害賠償など。国によって内容が大きく違う |
| 媒体の規約 | YouTube、TikTok、Meta、Google など各プラットフォーム | ラベルの強制付与、動画の削除、表示制限、広告の却下、アカウント措置 |
| 広告としての表示ルール | 景品表示法(ステマ規制)、業種ごとの法令・自主基準 | 措置命令、課徴金、業界団体からの指摘、媒体側の広告停止 |
この記事で最も強調したいのは、日常の広告運用で実際に引っかかるのは、ほとんどが真ん中の「媒体の規約」だということです。日本の法律にAI表記の一般的な義務がないことは事実ですが、それは配信先の規約を免除するものではありません。
日本の法律に、AI生成物であることの一般的な表示義務はない
2026年9月時点で、日本には「AIで生成した動画にはAI生成であると表示しなければならない」と定めた一般的な法律はありません。日本のAI政策は、罰則付きの包括規制ではなく、基本法とガイドラインによって事業者の自主的な取り組みを促す設計になっています。
AI推進法とAI事業者ガイドライン
2025年に成立・施行されたいわゆるAI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)は、研究開発と活用の推進を目的とした基本法で、AI生成物への表示義務を課すものではありません。
実務上の指針となるのは、総務省・経済産業省が公表しているAI事業者ガイドラインです。第1.2版が令和8年(2026年)3月31日に公表されています。これは拘束力のないソフトローですが、透明性やアカウンタビリティを重視する考え方が示されており、社内ルールを作るときの下敷きとして使えます。
つまり、日本国内向けの広告動画にAI表記を入れるかどうかは、現時点では法律ではなく、媒体規約と自社の方針の問題です。
それでも効いてくる4つの規制
「AI表記の義務がない」ことと、「AIで作った動画なら何を出してもよい」ことは別です。AI表記とは別の枠組みで、次の規制はそのまま適用されます。
| 規制 | AI動画で問題になりやすいこと | 確認先 |
|---|---|---|
| 景品表示法(優良誤認・有利誤認) | 実際の商品では起きない効果や状態を、AI映像で現実のように見せる。存在しない使用シーンや性能を演出する | 消費者庁 |
| 景品表示法(ステマ規制) | 広告であることが分からない体裁の動画を出す。AIで生成した「一般人の感想風」の映像に広告表記がない | 消費者庁 |
| 著作権 | 生成物が既存の作品に似る。学習・入力に使った素材の権利。BGMやフォントの利用条件 | 文化庁 |
| 肖像・パブリシティ・声 | 実在の人物に似た顔や声を広告に使う。退職した社員の映像を使い続ける。声のクローンを本人の同意なく使う | 本人・所属事務所・法務 |
特に混同されやすいのがステマ規制です。景品表示法第5条第3号に基づく「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の告示は2023年10月1日に施行されており、広告であることを明示する義務は、AIを使ったかどうかとは無関係に発生します。UGC風の広告動画を作るときは特に注意してください。この論点はUGC風広告動画の作り方でも扱っています。
媒体別・AI表記の判定早見表
実務で最初に見るべき表です。各媒体の公式規約をもとに、開示が求められる範囲を整理しました。詳細は次章以降で1媒体ずつ説明します。
| 配信先 | 開示が求められる主な場合 | 開示の方法 | 未開示のときの措置 |
|---|---|---|---|
| YouTube(通常の投稿) | 実在の人物・場所・出来事について、写実的で視聴者が誤解しうる生成・改変を含むとき | アップロード時の開示設定。写実的な内容はプレーヤー上、それ以外は説明欄にラベルが出る | YouTubeによるラベルの強制付与、コンテンツ削除、パートナープログラム停止などのペナルティ |
| TikTok | リアルに見える人物・場所・出来事を描いたAI生成コンテンツ(AIGC)や大きく編集したメディア | AIGCラベル、または明確なキャプション・ステッカー・ウォーターマーク | コンテンツの削除や表示制限、アカウントへの措置 |
| Meta(通常の投稿) | デジタルで作成・改変した写実的な動画やリアルな音声 | 投稿時の開示ツール(ラベル)。業界標準のAI指標を検出した場合は自動でラベルが付く | ペナルティの対象になりうる |
| Meta広告(社会問題・選挙・政治) | 後述の3類型に当たる、生成AIで作成・編集した写実的な画像・動画・音声 | 広告作成時の申告。2026年6月1日以降は自動検出による「AI Info」ラベルも表示される | 広告の却下。繰り返した場合はペナルティ |
| Google広告・YouTube広告(選挙広告) | 本物または本物のように見える人物・出来事を装って描写した合成コンテンツ・改変コンテンツ | キャンペーン設定の「改変または合成されたコンテンツ」をオンにする。自動開示が入らないフォーマットは広告主が開示を明記 | ポリシー違反としての措置 |
| Meta広告・Google広告(上記以外の一般的な商品広告) | AIを使ったこと自体を理由とする一律の開示義務は、規約上は定められていない | ―(誤認を与える表現そのものが別途禁止される) | 誤認を与える広告としての却下・停止 |
この表から読み取ってほしい原則は1つです。どの媒体も「AIを使ったか」ではなく「実在のものについて、視聴者が現実と誤解しうるか」を基準にしているということ。架空のキャラクターが商品を紹介するアニメ調の広告と、実在しない人物が実在の店舗の前で感想を語る写実的な広告では、まったく扱いが違います。
YouTube:写実的で誤解を招く改変は開示が必要
YouTubeは「変更されたコンテンツや合成コンテンツの開示」というルールを設けています。アップロード時に開示設定を行うと、内容に応じてラベルが表示されます。
開示が必要な場合
- 実在の人物が、実際には発言または行動していないことを、発言または行動しているように見せている
- 実際の出来事や場所の映像を改変している
- 実際には起きていない場面が、現実のように見えるコンテンツを生成している
開示が不要な場合
YouTubeは、明らかに非現実的な内容や、視聴者に「実際に何が起きたか」を誤解させない軽微な編集は対象外としています。公式ヘルプでは、美顔フィルタ、背景のぼかし、字幕の作成、自分の声のクローニングなどが例として挙げられています。
ラベルが出る場所
| 内容 | ラベルの表示場所 |
|---|---|
| 写真のようにリアルなAIコンテンツ | 動画プレーヤー上 |
| 非現実的なAIコンテンツ・アニメーション | 説明欄内 |
開示を怠った場合について、公式ヘルプは次のように説明しています。
クリエイターがこの情報開示を繰り返し意図的に怠る場合は、YouTube によるラベルの手動適用やペナルティ(コンテンツの削除や YouTube パートナー プログラムへの参加停止など)が発生する可能性があります。
なお、これはチャンネルに投稿する通常の動画のルールです。YouTube上で配信する広告は、次章以降のGoogle広告のポリシーが別に適用されます。
TikTok:リアルに見えるAIGCはラベルが必須
TikTokはコミュニティガイドラインの「完全性と信頼性」で、AI生成コンテンツ(AIGC)と編集メディアの扱いを定めています。リアルに見える人物・場所・出来事を描いたAIGCには、クリエイター自身によるラベル付けが求められます。
ラベルの付け方
- 投稿時の「AI生成コンテンツ」ラベル(AIGCラベル)を使う
- 画面上のテキスト、ステッカー、ウォーターマーク、キャプションで明示する
合成された顔や声、デジタルヒューマン、実写と見分けがつかない仮想の人物を含む場合や、AIによる編集で元の意味や文脈が変わっている場合は、特に開示の必要性が高くなります。
Content Credentialsによる自動ラベル
TikTokは2024年5月から、Content Credentials(C2PA)のメタデータを読み取って、他のサービスで作られたAIコンテンツにも自動でラベルを付ける仕組みを導入しています。手動でラベルを付けなければ気づかれない、という前提は成り立ちません。使用する生成AIツールがContent Credentialsを埋め込む仕様であれば、アップロードした時点で自動判定される可能性があります。
ラベルを付けずに投稿した場合、TikTok側でラベルが付与されるか、コンテンツが削除される可能性があります。悪質な場合や繰り返した場合は、表示制限やアカウントへの措置につながります。
Meta:通常の投稿と広告でルールが分かれる
通常の投稿(Facebook・Instagram)
Metaは、デジタルで作成・改変された写実的な動画やリアルな音声を投稿する場合に、開示ツールとラベルの使用を求めています。守らなかった場合はペナルティの対象になりえます。また、業界標準のAI指標を検出した場合や、投稿者が申告した場合に、Meta側でAIコンテンツであることを示すラベルを表示します。
社会問題・選挙・政治に関する広告(SIEP)
Metaの広告規定では、社会問題・選挙・政治に関する広告に、通常より厳しい開示ルールが定められています。第三者の生成AIツールで作成・編集した写実的な画像・動画、またはリアルに聞こえる音声を使う場合で、次のいずれかに当たるときは開示が必須です。
- 実在の人物が、実際には言わなかった、または行わなかったことを言ったり行ったりしているように描写する
- 実在しない、現実的に見える人物を描写する。実際には起こらなかった現実的な出来事を描写する。または実際に起こった出来事の映像を改変する
- 実際に発生したと主張されるが、その出来事の真正な画像・動画・音声ではない出来事を描写する
開示しなかったと判断された場合、広告は却下されます。繰り返し開示を怠った場合はペナルティの対象になります。
2026年6月1日からの「AI Info」自動ラベル
Metaは2026年6月1日から、第三者の生成AIツールの使用を自動検出する技術を導入し、「この広告について」に「AI Info」ラベルを表示するとしています。申告の有無にかかわらず、AI利用が検出され得る前提で運用を組んでください。
なお、Meta自身の生成AIクリエイティブ機能で作成・編集した広告についても、Metaが定める表示が付きます。入稿仕様そのものはMeta広告の動画入稿仕様にまとめています。
Google広告・YouTube広告:選挙広告は合成コンテンツの申告が必要
Googleは2024年7月に、政治に関するコンテンツのポリシーで合成コンテンツの開示要件を更新しました。選挙広告で、本物または本物のように見える人物や出来事を装って描写した合成コンテンツ・デジタル処理で改変したコンテンツを含む場合、広告主はキャンペーン設定の「改変または合成されたコンテンツ」のチェックボックスをオンにする必要があります。
| フォーマット | 開示の扱い |
|---|---|
| スマートフォンのフィード、スマートフォンのショート動画、インストリーム(パソコン・スマートフォン等) | チェックボックスをオンにすると、Googleが自動生成した開示情報が表示される |
| 上記以外のフォーマット | 広告主が、認識しやすい開示情報をクリエイティブ内に自ら入れる |
Googleが公式ヘルプで挙げている開示文言の例は次のとおりです。自社で開示を入れる場合の書き方の参考になります。
「改変または合成されたコンテンツ。」/「この音声はコンピュータで生成されたものです。」/「この画像は実際の出来事を描写するものではありません。」/「この動画コンテンツは合成によって生成されました。」
また、地域によっては選挙広告の掲載に適格性確認が必要です。EU域内については2025年9月のポリシー更新で、EU規則2024/900に定義される政治広告が制限されています。政治・選挙・社会問題に関わる広告を扱う場合は、配信先の国ごとに最新のポリシーを確認してください。
海外に配信するなら、EU AI Act第50条が2026年8月2日から適用
日本国内向けの配信だけであれば、当面の判断軸は媒体規約です。しかし、越境ECやインバウンド、海外拠点向けの配信がある場合は、配信先の国の法律が効いてきます。
EU:AI Act第50条の透明性義務
EU AI Actの第50条(透明性義務)は2026年8月2日から適用されています。AIで生成・改変した画像・音声・動画のうち、実在する人物・物・場所・団体・出来事に似ており、本物であるかのように見えるもの(ディープフェイク)を利用する事業者は、それが人工的に生成・改変されたものであることを開示しなければなりません。
実務上、重要な点が2つあります。
- 開示は、遅くとも視聴者が最初に接した時点で、明確かつ区別できる形で行う必要がある
- コンテンツに埋め込まれた機械可読のマーキングだけに頼ることはできない。人が特別な技術なしに知覚できる、目に見える・耳に聞こえるラベルが求められる
芸術的・創作的・風刺的・フィクション的な作品の一部である場合は、作品の表示や鑑賞を妨げない適切な方法での開示に限定されます。ただし、商品広告はこの例外に当てはまらない前提で設計するのが安全です。
そのほかの国
| 国・地域 | 状況 |
|---|---|
| EU | AI Act第50条の透明性義務が2026年8月2日から適用 |
| 中国 | 「AI生成合成コンテンツ標識弁法」が2025年9月1日施行。利用者が認識できる明示的標識と、メタデータへの暗黙的標識の両方が求められる |
| 韓国 | AI基本法が2026年1月22日施行。生成AIを使った製品・サービスの事前通知と、現実と区別しにくいAI生成物へのラベル付けが定められている |
| 米国 | 連邦の統一ルールではなく州法が中心。州ごとに対象・時期・内容が異なる |
| 日本 | AI生成物であることの一般的な表示義務はない |
海外配信を含む案件では、この表を出発点にしたうえで、必ず配信先の当局が公表している一次資料と、現地の法務・代理店に確認してください。この記事は法的助言ではありません。
表記が必要かを切り分ける5つの質問
ここまでのルールを、制作物1本ごとに判断できる形にまとめます。上から順に見て、1つでも「はい」があれば、開示を前提に設計してください。
- 実在の人物・団体が登場するか。実在の人物が、実際には言っていないことを言っている、していないことをしている映像・音声を含むか
- 実在の場所・店舗・商品・出来事を映しているか。実際の映像を改変しているか。実際には存在しない状態を、その場所や商品の現実の姿として見せているか
- 実写と見分けがつかない写実性があるか。視聴者が「これは撮影した映像だ」と受け取る可能性があるか
- 社会問題・選挙・政治に関わる内容か。該当するなら、Meta・Googleとも別枠の開示ルールが適用される
- EU・中国・韓国など、表示義務のある国・地域に配信するか
実際の広告クリエイティブに当てはめると、次のようになります。判断の型を共有するためのもので、最終判断は各媒体の最新規約と自社の法務基準で行ってください。
| クリエイティブの例 | 開示の考え方 |
|---|---|
| 架空のキャラクターがサービスを紹介するアニメ調の動画 | 写実性がなく、実在の人物・出来事を描いていない。媒体規約上の開示は通常求められない |
| 実在しないモデルが、実写と見分けのつかない映像で自社商品を使っている | 実在の商品を扱う写実的な映像。人物が実在すると受け取られる可能性があるため、開示を前提に設計する |
| 実際の店舗の写真をもとに、AIで賑わっている様子を追加した | 実在の場所の映像の改変。現実の混雑状況として誤解されうるため開示が必要。加えて優良誤認にも注意 |
| 商品写真をAIで動かし、回転と光の変化だけを付けた | 実在の商品を写実的に描く映像。商品の色・形・仕様が実物と一致しているかの確認が最優先。媒体の開示設定も確認する |
| 社員インタビューの音声を、AIで別の言語に吹き替えた | 実在の人物の発話の改変にあたる。本人の同意と、媒体の開示設定の両方を確認する |
| AIで生成した「一般ユーザーの感想」風の動画 | AI表記の前に、広告であることの明示(ステマ規制)が必須。実在しない人物の体験談として誤認させる表現自体を避ける |
商品画像を動かすワークフローと、商品が崩れないかの検収手順は商品画像からAI動画を作る方法と画像を動画にするAIの使い方で、不動産のように「実物と違って見えること」が直接クレームにつながる業種の注意点は不動産業界のAI動画活用方法で扱っています。
AI表記の書き方:どこに、何と書くか
媒体の機能を最優先で使う
画面内にテキストを焼き込むだけでは、媒体のポリシー上の「開示」として扱われないことがあります。まず媒体が用意している開示設定・ラベル機能をオンにし、そのうえで必要に応じて画面上の表記を足す順序で考えてください。
| 配信先 | 使うべき機能 |
|---|---|
| YouTube | アップロード時の「変更されたコンテンツや合成コンテンツ」の開示設定 |
| TikTok | 投稿時のAIGCラベル |
| Meta(通常の投稿) | 投稿時の開示ツール |
| Meta広告(社会問題・選挙・政治) | 広告作成時の申告 |
| Google広告(選挙広告) | キャンペーン設定の「改変または合成されたコンテンツ」 |
クリエイティブ内に書く場合の文言
自社で開示を入れる場合は、何が生成・改変されたのかが分かる書き方にします。冒頭で視聴者の目に入る位置に置き、字幕の安全領域の外に出ないよう配置してください。
この映像はAIで生成したイメージです。実際の商品・店舗とは異なります。/映像の一部にAI生成の演出を含みます。/この音声はAIによる合成音声です。
避けたい書き方
- 動画の最後に0.5秒だけ小さく出す。視聴者が最初に接した時点で認識できない
- 「AI」とだけ書く。何がAIによるものか分からない
- 説明欄の末尾にだけ書き、動画内には何もない(媒体によっては足りない)
- AI表記を入れたことで、広告・PR表記を省略する
- 誤認を与える表現そのものを、AI表記で正当化する。表記は免罪符ではない
AI表記と広告表記は別のルール
ここは実務で最も間違えやすい点です。ステマ規制に基づく「広告」「PR」の明示は、事業者の表示であることを一般消費者が判別できるようにするためのもの。AI表記は、映像が人工的に生成・改変されたものであることを知らせるためのもの。目的が違うため、両方が必要な場面では両方を書きます。一方を書いたことで他方が不要になることはありません。
公開前チェックリスト
AI動画を広告として出す直前に確認する項目です。案件ごとにコピーして使ってください。
- この動画は、実在の人物・団体・場所・商品・出来事を描いているか整理したか
- 写実性の程度を確認し、視聴者が撮影映像と受け取る可能性を評価したか
- 配信先ごとに、開示設定・ラベル機能の有無と使い方を確認したか
- YouTubeの開示設定、TikTokのAIGCラベル、Metaの開示ツールを、実際にオンにしたか
- 社会問題・選挙・政治に該当する内容ではないか。該当する場合、Meta・Googleの追加の開示要件を満たしたか
- クリエイティブ内の開示テキストが、冒頭で読める位置・サイズ・時間で表示されているか
- 広告・PR表記(ステマ規制)を、AI表記とは別に入れたか
- 商品の色・形・寸法・性能・価格が、AIの生成過程で実物と食い違っていないか
- 実在の人物の顔・声を使う場合、利用範囲・期間・二次利用を含む同意を書面で得たか
- 退職者・契約終了した出演者の映像・音声を使っていないか
- 使用した生成AIツールの利用規約で、その用途の商用利用が認められているか
- BGM・効果音・ナレーション・フォントの利用条件を確認したか
- 海外配信がある場合、配信先の国の表示ルールを一次資料で確認したか
- 使用したツール、モデル、入力素材、生成日、開示設定の内容を記録として残したか
- 公開直前に、各媒体の公式ヘルプで規約の更新がないか再確認したか
最後の項目は形式的に見えますが、この分野で最も重要です。2024年から2026年にかけて、各媒体の規約とEUの法制度は毎年動いています。「前回の案件で確認したから大丈夫」は通用しません。
FAQ:AI動画の表記について
Q1. AIを少しでも使ったら、必ず表記が必要ですか?
A. いいえ。各媒体が基準にしているのは、AIの使用有無ではなく、実在の人物・場所・出来事について視聴者が現実と誤解しうるかどうかです。色調補正、トリミング、字幕の自動生成、背景のぼかしといった、視聴者の理解を歪めない編集は、一般に開示の対象外とされています。ただし、社会問題・選挙・政治に関わる広告は基準が厳しくなるため、個別に確認してください。
Q2. 日本国内だけの配信なら、法律上は書かなくてよいのですよね?
A. 日本にはAI生成物であることの一般的な表示義務はありません。ただし、配信する媒体の規約は別に適用されます。YouTube・TikTok・Metaはいずれも、写実的で誤解を招くAI生成・改変コンテンツの開示を求めており、未開示にはラベルの強制付与、削除、広告却下などの措置があります。「法律上不要」を理由に媒体の開示設定を使わないことは、運用上のリスクになります。
Q3. AI表記を入れると、広告のCTRは下がりますか?
A. pitattoでは、同一クリエイティブでAI表記の有無だけを変えたA/Bテストの検証ログを持っていないため、数値としてお答えできません。一般論として、表記の有無より、冒頭3秒で何を見せるか、誰に向けた訴求かのほうが成果への影響は大きいと考えています。表記が必要な場合は、成果への影響を理由に省略するのではなく、表記を織り込んだうえで冒頭の構成を設計してください。冒頭の設計は動画広告の最初の3秒でスクロールを止めるフック12パターンを参考にしてください。
Q4. AIで作った動画を、AIと分からない形で広告に出すのは違反ですか?
A. 内容によります。架空のキャラクターや明らかに非現実的な演出であれば、開示なしで問題にならないケースが一般的です。一方、実在しない人物が実写のように商品を推薦する、実在の店舗の映像を改変するといった場合は、媒体の開示ルールに抵触する可能性があります。さらに、実際の商品では起きない効果を現実のように見せていれば、開示の有無にかかわらず優良誤認の問題になります。
Q5. 過去に公開した動画も、さかのぼって表記が必要ですか?
A. 媒体の規約や各国の法令は、施行時点以降の運用に適用されるのが原則ですが、配信中の広告や公開中の動画は「現在配信しているコンテンツ」として扱われます。現在も配信・公開している写実的なAI動画については、現行の規約に照らして開示設定を見直すことをおすすめします。特にEU向けに配信を続けている広告は、2026年8月2日以降の要件に合っているか確認してください。
まとめ:判断基準は「AIを使ったか」ではなく「現実と誤解されるか」
AI動画の表記は、法律・媒体規約・広告表示の3階層で考えると整理できます。日本の法律に一般的な表示義務はありませんが、実際に運用を止めるのは媒体の規約です。そして、どの媒体も基準にしているのは「実在するものについて、視聴者が現実と誤解しうるか」という一点です。
- 制作物ごとに、実在の人物・場所・商品・出来事を扱っているかを整理する
- 写実性の程度を評価し、撮影映像と受け取られる可能性を判断する
- 配信先の開示設定・ラベル機能を、必ず媒体の機能として使う
- 社会問題・選挙・政治に関わる広告は、別枠の厳しい開示要件を確認する
- AI表記と、広告・PR表記を別々に満たす
- 海外配信があれば、配信先の国の一次資料で表示ルールを確認する
- 使用ツール・入力素材・生成日・開示設定を記録に残し、四半期ごとに規約を再確認する
この分野で一番コストが低い対応は、迷ったら開示することです。開示によって失うものは限定的ですが、未開示による広告却下やアカウント措置は、配信そのものを止めます。制作と入稿のどこで誰が確認するかを、案件が始まる前に決めておいてください。制作方式ごとの工数と費用の考え方はAI動画制作の費用相場にまとめています。
参考にした公式情報(2026年9月7日確認)
- YouTube ヘルプ「変更されたコンテンツや合成コンテンツの開示」 — 開示が必要・不要な場合、ラベルの表示場所、未開示時のペナルティ
- TikTok コミュニティガイドライン「完全性と信頼性」 — 編集メディアとAI生成コンテンツ(AIGC)の開示要件
- TikTok Newsroom「Partnering with our industry to advance AI transparency and literacy」 — Content Credentials(C2PA)による自動ラベル付け
- Meta 透明性センター「Ads about Social Issues, Elections or Politics」 — 生成AIで作成・編集したコンテンツの開示3類型、広告却下、2026年6月1日からのAI Infoラベル
- Meta 透明性センター「Labeling AI Content」 — 通常の投稿における開示ツールとラベルの考え方
- Google 広告ポリシー ヘルプ「合成コンテンツの開示要件に関するポリシーの更新(2024年7月)」 — 選挙広告の開示チェックボックスと開示文言の例
- Google 広告ポリシー ヘルプ「政治に関するコンテンツ」 — 選挙広告の適格性確認と地域別の制限
- European Commission「Transparency obligations under Article 50 of the AI Act」 — ディープフェイクの開示義務と2026年8月2日からの適用
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」 — 第1.2版(令和8年3月31日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」 — 広告であることの明示に関する考え方
- 文化庁「AIと著作権について」 — 生成AIと著作権の考え方・関連資料