UGC風広告動画とは、ユーザーがスマートフォンで撮った投稿や、友人にすすめるような体験談の雰囲気を取り入れた広告動画です。きれいな商品紹介動画よりも、視聴者のいるフィードになじみやすいことから、TikTokやInstagramを中心に使われています。

ただし、「広告っぽさを消す」ことは、広告である事実を隠すことではありません。企業から依頼を受けた投稿や、商品提供・報酬を伴う紹介は、広告やPRであることが分かる表示が必要です。隠すべきなのは広告表示ではなく、視聴者が離脱するような一方的な売り込み感です。

この記事では、UGC風広告動画を作るときの構成、台本、スマートフォンでの撮影、編集、媒体別の考え方、権利確認、配信後の検証までを一つの流れで整理します。特定の商品や成果を保証する記事ではなく、商材に合わせて使える制作・運用の型として読んでください。

この記事の結論

  • – UGC風は「素人っぽく雑に作る」ことではなく、視聴者の目線・言葉・生活場面で価値を伝える設計
  • – 台本は Hook → Problem → Solution → Proof → CTA の順にし、最初に誰の悩みかを見せる
  • – 映像を作り込む前に、音声・字幕・冒頭1カット・広告表示・利用許諾を確定する
  • – 実際に使っていない人へ、使ったような体験談を言わせない。事実と演出の境界を明確にする
  • – 最初から1本の勝ち筋を決めず、冒頭・話者・見せる場面を分けてテストする

UGC風広告動画とは?通常の広告との違い

UGCは User Generated Content の略で、ユーザーが自発的に作成・投稿したコンテンツを指します。一方、企業が出演者やクリエイターへ依頼して制作する「UGC風広告」は、厳密にはユーザーの自然発生投稿ではありません。この記事では、ユーザー投稿のような視点・語り口・撮影感を持つ広告クリエイティブをUGC風と呼びます。

形式 誰が作るか 広告に使うときの確認
実際のUGC 顧客・ユーザー 本人の利用許諾、肖像・投稿内容・利用期間
クリエイター投稿 依頼を受けた出演者・発信者 報酬や提供の表示、投稿・広告利用の権限
UGC風広告 企業・制作会社・出演者 広告表示、台本の事実性、出演・音源・素材の権利
通常の広告動画 企業・制作会社 広告表示、商品表示、出演・音源・素材の権利

UGC風の強みは、画質を下げることではありません。視聴者が「自分の生活に置き換えられる」と感じる距離感にあります。話者の言葉、撮影場所、手元の動き、悩みの具体性がそろって初めて、広告としての情報が自然に入ります。

反対に、過度な演技、根拠のないビフォーアフター、実際には使っていない商品の体験談を入れると、短期的に目を引いても信頼を損ないます。UGC風にするほど、何が事実で何が演出なのかを制作側で管理することが重要です。

最初に決める3つ:誰に、何を伝え、どこへ動かすか

いきなり「自然な動画を撮ろう」とすると、出演者の雑談で終わります。撮影前に、次の3項目を1枚にまとめてください。

決めること 記入例 決めないと起きること
対象者 朝の準備時間を短くしたい人 誰に向けた話か分からず、共感が薄くなる
主な悩み 使い方が難しそうで試せない 商品の機能説明だけになる
視聴後の行動 商品ページで成分と使い方を確認する 「買ってください」だけの弱いCTAになる

主張も一つに絞ります。「時短」「使いやすさ」「価格」「仕上がり」などをすべて盛り込むと、UGC風の会話が説明会になります。1本目は主訴求を一つにし、別のメリットは2本目以降で検証しましょう。

冒頭で使うフックの型は、動画広告の最初の3秒でスクロールを止めるフック12パターンにも整理しています。UGC風動画では、その型を口語に置き換えるのが実務的です。

UGC風広告の基本構成:HookからCTAまで

基本形は、Hook → Problem → Solution → Proof → CTAです。これは尺を固定するルールではなく、視聴者の疑問を順番に解消するための骨格です。15〜30秒を想定した例を示しますが、商品説明が必要な商材では長く、単純な訴求なら短く調整してください。

パート 視聴者の疑問 画面とセリフの例
Hook 自分に関係があるか 「朝の準備、毎日ここで止まる人へ」
Problem 何に困っているか 困っている場面を見せ、状況を一言で説明する
Solution どう解決するか 商品やサービスを使う手元、画面、手順を見せる
Proof 信じてよいか 使い方、仕様、検証条件、許諾済みレビューを示す
CTA 次に何をすればよいか 「詳細と対象条件を商品ページで確認してください」

6〜15秒:悩みと解決だけを見せる

短尺では、自己紹介や会社説明を先に入れません。最初の一言で対象者と悩みを示し、解決場面へ切り替えます。

台本例:「これ、外出前に毎回迷う人へ。私はこの順番に変えたら、準備することが一つ減りました。やり方は商品ページにまとめています」

この例では、成果を断定せず「何を変えたか」を見せています。実際の利用者でない出演者が話す場合は、「私は使って変わった」と言わず、使い方や特徴を紹介する話者として役割を設定します。

15〜30秒:悩み、使用場面、選んだ理由を入れる

中尺では、ProblemとSolutionの間に「なぜこの商品を選んだか」を入れられます。

台本例:「朝は時間がないのに、準備の手順が多いのが悩みでした。そこで、片手で扱えて、使う順番が分かりやすいこの商品を試しました。私はこの点が続けやすかったので、成分と使い方を見てから決めたい人は詳細を確認してみてください」

「すぐ効果が出た」「誰でも変わる」といった表現は、商品カテゴリーや根拠によって規制・審査上の問題になることがあります。検証していない結果を、体験談の形で補わないでください。

30〜60秒:第三者の疑問まで先回りする

比較検討が必要なサービスや高単価商品では、価格、対象者、使い方、注意点、導入後の流れまで説明します。ただし、一人の話者が全部を早口で話すのではなく、日常場面、手元、画面キャプチャ、字幕を組み合わせます。

構成例:冒頭で対象者を示す → 困っていた場面 → 選んだ基準 → 実際の手順 → 向いていないケースや注意点 → 詳細ページへの案内。

長尺の構成を作るときも、冒頭の悩みが後半のCTAまでつながっているかを確認してください。途中で商品説明の羅列になると、UGC風の会話から通常のカタログ広告へ戻ってしまいます。

広告っぽさを抑える撮影方法

UGC風の撮影では、機材を高価にするより、話者が無理なく話せる環境を作るほうが先です。スマートフォン、固定用のスタンド、音声を改善するマイクがあれば始められます。

画角と背景:生活場面が分かる情報を残す

  • 縦型を基本にし、撮影前に配信先の比率とセーフゾーンを確認する
  • 顔だけでなく、商品を使う手元や生活場面が分かる距離も撮る
  • 背景は片付けすぎず、個人情報・他社ロゴ・第三者の著作物は映さない
  • 画面上部・下部には、アカウント名やCTAが重なる前提で重要な字幕を置かない

手持ちの揺れを完全に消す必要はありません。ただし、揺れで字幕が読めない、顔が暗い、商品が見えない状態は「自然」ではなく見づらさです。手持ちカットと固定カットを使い分けてください。

音声:映像より先にテストする

UGC風動画では、話者の声が価値説明の中心になります。撮影前に10秒だけ録音し、スマートフォンで再生して、声量・反響・空調音・衣擦れを確認します。屋外なら風防付きのマイクを使い、話者とマイクの距離が変わりすぎないようにします。

音声を別録りする場合は、口の動きと同期できるよう、撮影開始時に手を叩くなどの目印を入れます。音声が聞き取れない動画を、BGMや効果音で隠そうとしないでください。

演出:セリフを暗記させず、質問で引き出す

自然な表情を出したいときは、出演者に長い台本を暗記させるより、撮影者が質問して答えてもらう方法が有効です。編集で不要な間を整え、実際の言葉の中から使える部分を選びます。

撮影者の質問 引き出したい内容
最初に困ったのはどの場面ですか 抽象的な悩みではなく、時間・場所・行動
使う前に何が不安でしたか 視聴者が感じる導入前の障壁
どの機能・手順が選ぶ理由になりましたか 競合と比べた具体的な価値
合わない人がいるとしたらどんな人ですか 過剰な万能感を避ける注意点

自然に見せるために、やらないこと

  • 実際には使っていない人に、利用者としての感想を言わせる
  • 「絶対」「誰でも」「必ず」といった根拠のない断定を入れる
  • わざとピントを外す、音を割る、画面を極端に揺らす
  • 本物に見える偽のレビュー画面や、出所のない数字を作る
  • 広告表示を目立たなくするため、読めない場所や短すぎる表示にする

編集で「広告っぽさ」を消す5つのポイント

  1. 最初の1カットを説明ではなく場面にする:商品画像やロゴから始めず、悩みが起きている瞬間を見せる。
  2. 間をすべて切らない:不要な沈黙は削るが、呼吸やリアクションまで消すと読み上げ広告に見える。
  3. 字幕だけでも意味が通るようにする:音声なしで見ても、対象者・悩み・次の行動が分かるようにする。
  4. 加工を目的にしない:トランジションやスタンプは、情報の切り替えが必要な箇所に限定する。
  5. BGMより声を優先する:広告利用できる音源か確認し、BGMが声や字幕の理解を邪魔しない音量にする。

編集後は、音あり・音なし・小さなスマートフォン画面の3条件で確認します。音なしで何も伝わらない、字幕がUIに隠れる、音ありで声が聞こえない場合は、公開前に直します。音と広告効果の関係は音楽が広告効果に与える影響でも扱っています。

pitattoでは、実写素材とオリジナル楽曲を組み合わせた広告動画の制作例を公開しています。以下はUGC風広告の実績紹介ではなく、実写素材を活かして編集・音楽を組み合わせる表現の参考です。出演者や顧客の体験談を使う場合は、別途、事実確認と利用許諾が必要です。

ハイブリッド
UGC風広告の実績ではなく、実写素材とオリジナル楽曲を組み合わせた一般的な広告動画の制作例。UGC風に応用する場合は、出演者・素材・利用範囲を別途確認します

媒体別の使い分け:同じ動画をそのまま流用しない

縦型動画を使える媒体でも、視聴者が動画を見る文脈と、クリックまでの導線は異なります。1本を全媒体へそのまま出すのではなく、同じ素材から冒頭・字幕・CTAを媒体別に調整します。

媒体 UGC風の設計 確認すること
TikTok 投稿として成立する話者・テンポ・コメントとの相性を優先 クリエイター投稿を広告化する場合の承認・権限、広告設定、最新仕様
Instagram Reels 日常の画面になじむ実写、読みやすい字幕、プロフィールやLPへの導線 有償・提供・提携がある場合のPaid partnership表示、画面のセーフゾーン
YouTube Shorts 検索・チャンネル回遊も見据え、冒頭でテーマを明示 縦型・尺・音源・広告配信の最新仕様。Shortsの仕様は更新される
Facebook 年齢層や配置に応じて、字幕とCTAを少し明確にする Reels・フィードなど配置ごとの見え方、リンク先、コメント対応

TikTokのSpark Adsは、オーガニック投稿を広告クリエイティブとして使う形式です。他のクリエイターの投稿を使う場合は、本人の承認が前提になります。Instagramでも、報酬や商品提供など価値の交換がある場合は、Paid partnershipなどの表示を確認します。UGCらしさと透明性は両立させてください。

サイズやセーフゾーンの細かな仕様は更新されるため、入稿直前に各媒体の公式ヘルプを確認します。画面設計の共通ルールは縦型動画(9:16)の設計ルールにまとめています。

UGC素材・出演者・音源の権利を確認する

ユーザー投稿を使う場合

「タグ付けされたから広告に使ってよい」とは限りません。DMやフォームなどで、少なくとも次を明示して許諾を取得します。

  • どの投稿・動画・画像を使うか
  • どの媒体で使うか(自社SNS、広告、LP、営業資料など)
  • 利用期間、地域、広告配信の有無
  • 字幕・トリミング・音源差し替えなどの編集範囲
  • 出演者・映り込みのある人・未成年者の同意

許諾文面、対象素材、返信日時を保存し、広告セットや納品データと紐づけます。削除依頼や契約終了があった場合に、どこへ使われているか追跡できる状態にしておくと安全です。

音源を使う場合

SNSの通常投稿で使える音源が、そのまま広告配信にも使えるとは限りません。広告目的で音楽を動画へ組み込む場合は、楽曲の著作権だけでなく、音源製作者やアーティストの権利も確認します。JASRACも、広告目的の複製と広告展開利用を分けて案内しています。

広告主が用意するオリジナル音源、広告利用が明示されたライブラリ、媒体が広告向けに提供する音源など、利用条件を確認できるものを選びます。「アプリ内で選べた」という理由だけで広告利用可と判断せず、ライセンスの範囲を保存してください。

広告表示と表現規制:広告感を消しても、広告であることは隠さない

日本では、広告であるにもかかわらず広告だと分かりにくくするステルスマーケティングが景品表示法の規制対象です。企業が依頼した投稿、報酬・商品提供・アフィリエイトなどの関係がある場合は、視聴者が広告だと理解できる表示を設計します。

表示位置や方法は媒体・投稿形式・契約関係によって変わるため、「小さな文字を一瞬だけ出せばよい」と決め打ちしません。広告管理画面の表示、投稿内の「広告」「PR」等の表示、媒体が提供する提携ラベルを組み合わせ、視聴者が通常の投稿と誤認しない状態にします。

さらに、健康・美容・食品・金融などは、効果や安全性、比較、価格表示に追加の規制が関係することがあります。体験談の形にしても、根拠のない効果保証が許されるわけではありません。制作前に法務・広告審査・専門家へ確認してください。

配信後の検証:どこで離脱したかを分けて見る

UGC風かどうかを感覚だけで判断せず、動画のどの段階で反応が落ちたかを見ます。最初からCTRやCPAだけを見て動画全体を作り直すと、原因を見誤ります。

観察される状態 疑う箇所 次に試すこと
冒頭で視聴が急落する 対象者・悩みが1カット目で分からない 話者、最初の一言、冒頭の場面だけ変える
視聴は続くがクリックされない 価値、証拠、CTAが弱い・遠い 選ぶ理由と次の行動を一つずつ明確にする
クリックはあるがLPで離脱する 動画の約束とLPの内容が一致していない 冒頭の訴求、商品ページ、フォームの文言をそろえる
コメントは多いが成果につながらない 話題性はあるが、対象者・条件・購入理由が弱い コメントの疑問を次の台本とFAQへ反映する

テストでは、1回に変える要素を絞ります。例えば、同じ商品・同じCTAのまま冒頭の悩みだけを3種類にする、または同じ台本で話者だけを変える、といった形です。配信期間、対象、予算、最適化イベントを記録し、結果を単純な勝ち負けではなく「どの視聴者に、どの言葉が届いたか」で残します。

広告の効果が出ないときの切り分けは、動画広告の効果が出ない5つの原因も参照してください。UGC風にすること自体が目的ではなく、視聴者の理解と次の行動につながるかが判断基準です。

制作から検証までの進め方

時期 作業 完了条件
1週目 対象者、悩み、主訴求、CTA、表現上の注意を決める 1枚のクリエイティブブリーフがある
2週目 6〜15秒、15〜30秒などの台本、出演者、撮影場所、権利条件を決める 台本と許諾・広告表示の確認項目がそろう
3週目 音声テスト、本撮影、複数の冒頭・リアクション・商品カットを撮る 編集前の素材を一覧化できる
4週目 字幕、音声、CTA、媒体別の派生版を作り、広告審査前に確認する 音あり・音なし・小画面で確認済み
5〜6週目 配信、視聴・クリック・LPの反応確認、次の仮説作成 改善する要素を一つに絞れている

短納期にしたい場合でも、権利確認と音声テストを削らないでください。撮影を1日でまとめるなら、同じ台本の冒頭違い、話者の表情違い、商品を見せる順番違いをまとめて撮ると、検証用の素材を作りやすくなります。

公開前チェックリスト

  • 対象者、悩み、主訴求、視聴後の行動が一つずつ決まっている
  • 冒頭の1カットだけで、誰のどんな悩みかが分かる
  • 出演者が実際に使っていない商品について、利用者の体験談を装っていない
  • 効果・比較・数字・レビューに、確認できる根拠がある
  • 企業との関係、報酬、商品提供などに応じた広告・PR表示がある
  • ユーザー投稿、出演者、映り込み、ロゴ、画像、音源の利用許諾がある
  • 広告配信で使える音源か、利用期間・媒体・地域を確認した
  • 字幕が音なしでも意味をなし、媒体のUIに隠れていない
  • 同じ素材から、冒頭・話者・CTAの検証版を作れる
  • 公開後に見る指標と、次に変える要素を決めている

まとめ:UGC風は「広告を隠す技術」ではなく、視聴者の文脈に合わせる設計

UGC風広告動画を作るときは、次の順番で進めます。

  1. 実際のUGCか、依頼制作のUGC風かを区別し、利用許諾と広告表示の条件を決める
  2. 対象者の具体的な悩みと、動画で伝える主訴求を一つに絞る
  3. Hook → Problem → Solution → Proof → CTA の順に台本を作る
  4. スマートフォンで音声、画角、字幕、背景、手元の情報を撮る
  5. 冒頭・話者・見せる場面を分けて配信し、視聴・クリック・LPの落ち方を確認する

自然な話し方や手持ち感は、UGC風に見せるための手段です。最終的に大切なのは、視聴者が自分の悩みとして理解でき、広告だと分かったうえで、次の情報を確認できることです。信頼を残したまま、広告の距離感だけを近づけてください。

参考にした公式情報