同じInstagramの広告でも、移動中にスマートフォンで流し見する人と、自宅で商品の比較をしている人では、動画に求めるものが違います。YouTubeも、ショート動画を次々と見ているとき、検索結果から動画を選ぶとき、テレビ画面で別の動画を見ているときでは、広告との出会い方が変わります。

動画広告は「TikTok向け」「YouTube向け」と媒体だけで分けると、こうした違いを見落とします。媒体に加えて、ユーザーがそのとき何をしていて、どんな状態で画面を見ているかまで考えると、冒頭に置く情報や、動画の終わり方が決めやすくなります。

制作前に押さえたいこと

  • 同じ媒体でも、流し見・検索・比較・別の動画の視聴中では、広告に割ける注意が違う
  • 時間帯や場所は「見方を想像する手がかり」。実際の視聴状況や広告効果を決めつけない
  • 最初に見せる情報、音の使い方、次の行動を視聴場面に合わせて変え、配信結果で確かめる

媒体名の前に、「今、何をしている人か」を考える

視聴場面を考えるときは、媒体、行動、環境を分けると整理しやすくなります。

確認すること 考える内容 動画への影響
媒体・広告枠 Reels、TikTokのフィード、YouTubeの検索結果、動画の再生前など 画面の形、スキップやスクロールのしやすさ
そのときの行動 何となく見る、答えを探す、商品を比較する、別の動画を楽しむ 冒頭に必要な情報と、説明できる深さ
見る環境 スマートフォンかテレビ画面か、音を出せるか、すぐ操作できるか 文字の大きさ、音声の役割、行動の促し方

例えば「夜にSNSを見る人」でも、寝る前に流し見する人と、購入前に口コミを探す人では、欲しい情報が違います。ビデオリサーチの映像メディアの利用調査では、2025年の自宅内におけるネット動画・SNS利用は19時台から増え、22時台ごろに山を迎えています。ただし、これは利用が増える時間帯を示すデータです。その時間にどんな広告が効くかを示した結果ではありません。

「流し見」のフィードでは、最初の画だけで話を始める

TikTok、Instagram Reels、YouTube Shortsなどでは、視聴者は次の動画へすぐ移れます。商品説明の前に長いロゴアニメーションを置くより、使う場面や起きる変化を最初に見せる案が考えられます。

例えばエステサロンなら、最初にサロン名だけを出すより「自分のケアを後回しにしていた」という場面から始め、その後にメニューと予約方法を見せます。視聴者が一瞬で何の話か分かる画面にすることが大切です。

音については、「SNSはすべて無音」と決めないことも重要です。MetaのReels広告案内は音を使った縦型表現を推奨し、TikTokの制作ガイドも音楽や効果音の活用を勧めています。一方、視聴者が音を消している場面も想定できます。音声があると魅力が増し、無音でも商品と便益が分かる構成を試しましょう。

「探している人」には、クリックする理由と判断材料を渡す

同じYouTubeでも、検索結果や関連動画の一覧に出る広告は、再生前にサムネイルやタイトルを見て選ばれます。Google広告の動画形式ガイドでも、インフィード動画広告は検索結果や関連動画などに表示され、視聴者がクリックして見る形式として説明されています。

ここでは「目立つ映像」だけでなく、探している答えがありそうだと分かることが重要です。例えば「宅配クリーニング 料金」を調べている人に向けるなら、印象的なブランドムービーより、料金の考え方、集荷の手順、利用前に気になる条件を順に説明する動画のほうが検討に役立つ可能性があります。

もちろん、検索した人が必ず長い動画を見るとは限りません。サムネイルとタイトルで扱う疑問を示し、動画の冒頭ですぐ答えに入る。そのうえで、必要な人が詳細まで見られる構成にします。

「別の動画を見たい人」には、広告の用件を早く伝える

YouTubeのスキップ可能なインストリーム広告は、見ようとしていた動画の前後や途中に入ります。Google広告の案内では、視聴者は再生開始から5秒後にスキップできます。検索結果から自分で選んだ動画とは、広告に向ける気持ちが違います。

この場面では、長い前置きの後に商品が出てくる構成だと、何の広告だったか分からないまま終わるかもしれません。誰に役立つ商品か、何が変わるか、ブランドは何かを早い段階で示し、その後に実演や根拠を続けます。詳しい冒頭表現の作り方は動画広告の冒頭3秒の作り方にまとめています。

テレビ画面では、距離と「次の操作」を考える

自宅のテレビ画面でネット動画を見る人に、スマートフォン向けの小さな文字をそのまま出すと、料金や注釈が読みにくくなります。ブランド名と商品が大きな画面でも分かるか、音声を聞けば内容を追えるか、離れた場所から確認したい表現です。

行動の促し方も変わります。テレビの視聴者に「今すぐ画面をタップ」と言っても、その画面ではタップできません。Google広告には、対応するテレビ画面の動画広告から携帯端末へリンクを送る機能や、対象の広告形式でQRコードを表示する機能があります。ただし、利用できる機能は広告形式や端末によって異なります。配信前に実際の表示と導線を確認しましょう。

流し見、検索して比較、別の動画の視聴中、テレビ画面での視聴という四つの場面と、それぞれ動画の冒頭に置く情報を示した図
媒体に加えて、視聴者の行動と画面の状態から「最初に伝えること」を選ぶ。

時間帯や場所は、広告の「決まり」ではなく制作案にする

朝の移動中なら音を出しにくいかもしれません。夜の自宅なら、商品の比較に時間を使う人もいるでしょう。ただ、「朝=無音」「夜=じっくり視聴」とは言い切れません。場所も時間帯も、広告管理画面だけで視聴者一人ひとりの状態が分かるとは限らないためです。

制作時には、例えば次のように確かめたい条件として扱います。

  • スマートフォンのフィードで流し見されるなら、無音でも使い方が伝わるか
  • 夜に商品の比較が増えるなら、価格や条件を詳しく見せる版が必要か
  • テレビ画面で見るなら、文字を減らし、ブランドと次の行動が伝わるか

時間帯だけを理由に動画を作り分けず、配信面、端末、商品を検討している段階と組み合わせて考えます。

同じ宅配クリーニングの広告でも、見る場面を仮に設定すると、制作案は次のように変わります。

想定する場面 最初に見せるもの 続けて伝えるもの
移動中、Reelsを流し見 服を預ける場面と「持ち込み不要」の一言 玄関での受け渡し。音を消しても意味が分かる文字
夜の自宅、同じサービスを比較中 料金や集荷日の確認画面 申し込み手順、利用条件、よくある疑問
自宅のテレビ画面で動画を視聴中 ブランド名とサービスの使い方を大きく 画面の仕様に合った次の行動への案内

これは視聴場面ごとの制作案です。広告を夜に配信しただけで、見た人が自宅にいたり比較中だったりすると分かるわけではありません。実際の配信面・端末・反応を見て、案が合っていたかを確かめます。

実制作の動画から、視聴場面別の編集案を考える

下の動画は、pitattoが女性専用エステサロン向けに制作した39秒の広告です。自分のケアを後回しにしている場面から入り、施術の内容と店舗を見せています。これから示す場面別の編集案は提案であり、この動画を場面別に配信して成果を比較した結果ではありません。

リアル再現
pitattoが制作したエステサロンの広告動画。視聴場面別の効果比較を示すものではありません。

この素材を使い分けるなら、例えば次のように考えられます。

配信する場面 編集案 最初に確かめること
SNSのフィード 悩みの場面と施術後のイメージを先に見せ、無音でも内容が分かる文字を添える 冒頭でサロンの内容が伝わるか
検索・比較中 メニュー、所要時間、予約前に気になる情報を加える 視聴後に必要な情報が残るか
テレビ画面 細かい文字を減らし、店舗名と利用場面を大きく見せる 離れて見ても認識できるか

一つの長い動画を各媒体の仕様に合わせて切るだけでは、見る人の疑問に合わない場合があります。まず訴求の核を決め、冒頭、説明の深さ、終わりの行動を場面ごとに変えるのが制作の出発点です。尺の選び方は動画広告は15秒と30秒どちらが正解かも参考にしてください。

配信後は、「どの場面で何を狙ったか」に沿って見る

フィード向け動画の再生率と、検索結果から選ばれる動画の再生率を並べても、広告の出方が違うため、そのまま優劣は決められません。比較するときは、同じ配信面・目的・対象者の中で、冒頭や説明の順番を変えた案を試します。

認知が目的なら、商品やブランドを覚えてもらえたか。問い合わせが目的なら、サイト訪問だけでなく問い合わせにつながったか。目的に近い結果まで見て判断しましょう。期待した成果が出ないときは、動画以外に配信設定や遷移先ページも確認が必要です。切り分け方は動画広告の効果が出ない原因にまとめています。

まとめ:媒体の中にいる「人の行動」まで設計する

同じプラットフォームでも、視聴者が流し見しているのか、答えを探しているのか、別の動画を見ようとしているのかで、広告の役割は変わります。時間帯や場所も合わせて考えれば、画面の最初に何を置き、どこまで説明し、どう次の行動へつなぐかを具体的に決められます。

制作で改善できるのは、クリエイティブが原因になっている部分です。配信条件や商品ページも確認しながら、視聴場面ごとの案を試していきましょう。既存動画の見せ方を整理したい方は無料クリエイティブ診断へ。動画の企画から相談したい方は制作についてお問い合わせください。

参考資料