「動画は社内で作ったほうが安いのか、外に頼んだほうがいいのか」——広告やSNSに動画を使い始めるとき、多くの経営者が最初に迷うところです。

答えは、作る本数、担当者の時間、求める仕上がりで変わります。はっきり言えるのは、社内で作る費用は0円ではないということです。見積書に出てこないだけで、担当者と確認する人の時間、ソフトや機材の代金に形を変えています。

以下、判断の4つの基準、社内で作るときに見えにくい費用、外に頼んでも残る作業、工程ごとに分ける方法の順に見ていきます。自社の数字で計算する方法は、後半の「詳しく知りたい方向け」にまとめました。外に頼むときの料金の相場はSNS動画制作の費用相場で扱っているので、ここでは社内で作る場合と外に頼む場合を同じ物差しで比べることに絞ります。

内製か外注かは、外注で決める6つのことの2番目にあたります。外注すると決めたあとの流れ——予算の幅、依頼先の種類、見積もりの比べ方、契約条件——は動画制作の外注ガイド|流れ・準備するもの・注意点にまとめています。

この記事の要点

  • 社内で作る費用は0円ではない。担当者と確認する人の時間、ソフト・機材の代金に形を変えているだけ
  • 外に頼んでも、目的を決める・素材をそろえる・確認するといった社内の作業は残る
  • 1本だけなら外に頼む、毎月決まった本数を作り続けるなら社内か分担が有利になりやすい
  • 広告のように失敗できない動画は、金額だけでなく、仕上がり・納期・権利の確認まで比べる
  • どちらか一方に決めず、企画は社内・編集は外、のように工程で分ける方法もある

内製か外注かを決める4つの基準

金額を比べる前に、次の4つで大まかな向き不向きが決まります。

基準 社内で作るのが向く 外に頼むのが向く
時間 小さな差し替えを、すぐ出したい 納期を決めて、一度に完成させたい
仕上がり 型を決めて、同じ形で作れる 企画・演出・撮影・編集に専門の腕が要る
続けられるか 毎月決まった本数を作る。担当者と確認の決まりがある 年に数本で、毎回内容が違う。担当者を採用・教育する余裕がない
向き不向き 社内の情報や、日々の現場を見せる動画 ブランドの品質・権利・広告表現を管理したい動画

時間:担当者の本来の仕事が止まっていないか

社内で作ると見積書は出ませんが、担当者の時間を使います。企画・台本・撮影・編集に加えて、上司や関係部署の確認、手直しの時間もかかり、その間は担当者の本来の仕事が止まります。外に頼めば納期を決めて一度に完成させられ、社内で作れば小さな差し替えをすぐに出せます。

仕上がり:失敗したときの損まで見る

社内で作る動画は、型を決めて同じ形で作るものほど安定します。一方、重要な広告や採用の動画では、やり直し・公開の延期・差し替えといった、失敗したときの損が大きくなります。最初から正確に金額にしにくい損だからこそ、最安値だけでなく、確認の体制・権利の確認・修正の条件・納期の確実さまで比べてください。採用の動画については採用動画の作り方と費用で扱っています。

続けられるか:担当者1人に集中させない

社内で作る最大の利点は、動画そのものだけでなく、企画のしかたやお客様への理解が社内にたまることです。ただし、担当者1人に企画・撮影・編集・投稿を集中させると、退職や繁忙期に制作が止まります。

1本だけなら、外に頼むほうが有利になりやすいです。ソフトや機材の毎月の代金は、動画を作らない月にもかかるためです。毎月決まった本数を作り続けるなら、社内で作るか、工程ごとに分けるほうが有利になりやすくなります。

向き不向き:何を見せる動画か

日々の現場、スタッフ、社内の情報を見せる動画は、社内の人がいちばん早く撮れます。反対に、広告用の構成、最初の場面の作り方、複数パターンの作り分けといった専門の腕が要る部分は、外に頼むほうが向いています。

社内で作る費用は「見えにくい」だけ

外に頼めば、見積書の金額が見えます。社内で作る場合は、担当者の給与、会社が負担する社会保険、ソフト、機材、確認や手直しの時間が、別の予算や担当者の時間に紛れています。同じ「動画1本」でも含まれる作業が違うので、まず比べる範囲をそろえます。

作業 社内で作るとかかるもの 外に頼むとかかるもの
企画 担当者の企画・会議・社内の調整の時間 企画・構成費、進行管理費
素材の準備 商品の情報、写真、台本、撮影の準備 素材の整理や撮影準備の社内対応+追加の素材費
撮影 社員の拘束時間、機材、場所、移動 撮影スタッフ、機材、スタジオ、交通費
編集 担当者の編集時間、ソフト、パソコン、データの保存 編集費、音楽・素材・ナレーション費
確認・手直し 上司・関係部署の確認時間、やり直し 無料の修正回数を超えた追加費用+社内の確認時間
公開・運用 書き出し、投稿、報告、差し替え 画面サイズ違い・短い版・広告への転用の追加費用+社内での投稿

比べる単位もそろえてください。「15秒の動画1本」ではなく、何本を、何営業日で、どの媒体に、何回の修正で、どこまで使える権利で作るかまで決めてから比べます。

社内で作る費用は、おおまかに言えば「関わる人の時間 × 1時間あたりの費用」+ソフト・機材・素材の代金です。1時間あたりの費用は、手取りの給与ではなく、社会保険などの会社負担を含めた総額から出します。具体的な出し方と、仮の数字で計算した例は後半にまとめました。

見落としやすいのが、担当者以外の確認の時間です。営業、広報、法務、事業の責任者が15分ずつ見ていても、関わる人が多ければ1本あたりの費用になります。

外に頼んでも、社内に残る作業

「丸投げできる」と考えて見積もりを比べると、頼んだあとの社内の手間が想定より大きくなります。外に頼んでも、次の作業は社内に残ります。

  • 目的、見てほしい相手、伝えること、出す媒体を決める
  • サービスの情報、ロゴ、商品画像などの素材をそろえる
  • 社内の関係者から確認の意見を集め、1つにまとめる
  • 広告の表現やブランドの表現を確認する
  • 納品された動画を各媒体に載せ、成果を確かめる

反対に、頼む側で目的や素材が整理できていれば、外の会社の企画・進行の手間が減り、その分の費用を抑えられることもあります。

追加の費用が出やすいところを、先に決めておく

最初の金額が安くても、短い版や別の画面サイズを頼むたびに追加費用がかかれば、続けるほど高くなります。見積もりの「一式」「別途」の中身まで確認してください。

追加になりやすい項目 確認すること
修正 無料の修正は何回か。全体での回数か、工程ごとの回数か
納品の形 縦長・正方形・横長、字幕のあり・なしを含むか
素材 写真・動画・音楽・ナレーションは誰が用意するか
権利 広告に使えるか。期間・媒体・地域・別の用途への使い回しはどこまでか
元のデータ 編集のデータや素材のデータを受け取れるか
追加の本数 短い版や最初の場面違いを足すと、いくらかかるか

見積書そのものの読み方は、動画制作会社の選び方|見積書の見方と確認する7項目で詳しく扱っています。

業種別に見る、社内で持つこと・外に頼むこと

pitattoへのご相談が多い2つの業種について、社内で作りやすい動画と、外に頼むほうがよい動画の分け方の例です。

エステ・サロン・美容

  • 社内で持ちやすいもの:施術の様子、店内の日常、スタッフの紹介など、日々の投稿。現場にいる人がいちばん早く撮れ、小さな差し替えもすぐ出せます
  • 外に頼みやすいもの:新規の予約を集めるための広告の動画。最初の場面の作り方や、複数パターンの作り分けに専門の腕が要ります
  • 気をつけること:施術と撮影・編集を同じスタッフが兼ねると、繁忙期に制作が止まります。また、美容の広告には表現のルールがあります。表現の最終確認は広告を出す側で行う前提で、制作の段階から相談しておくと手戻りが減ります

食品・EC・D2C

  • 社内で持ちやすいもの:お客様の悩み、商品の情報、どの商品を優先して売るか。ここは社内がいちばんよく知っています
  • 外に頼みやすいもの:広告用の構成と本編集、最初の場面だけを変えた版、縦長・正方形・横長の作り分け。商品画像から動画を作る方法は商品画像からAI動画を作る方法で解説しています
  • 気をつけること:短い版や別サイズを足すたびに追加費用がかかる契約だと、出す本数が増えるほど割高になります。社内で作る場合も、ソフト・素材サイト・音楽の毎月の代金は、作らない月にかかります。食品の広告にも表現のルールがあり、最終確認は広告を出す側で行う前提で進めます

二択にせず、工程ごとに分ける

実際には、内製か外注かを1つに決めるより、工程ごとに分けるほうが合理的です。

工程 社内で持つ例 外に頼む例
企画 お客様の悩み、商品の情報、社内の優先順位 広告用の構成、最初の場面の作り方、演出の案
素材 日々の現場、社員、商品写真 撮影、AIで作る素材、モデル、音楽
編集 簡単な字幕・切り抜き・投稿用の加工 広告動画の本編集、複数パターン
運用 投稿、広告の配信、成果の確認 改善の案、広告の動画の追加制作

たとえば、社内で企画と素材の優先順位を決め、編集だけを外に頼む方法があります。逆に、社内の素材を渡して、広告用の構成・編集・媒体ごとの書き出しを頼むこともできます。

撮影をしない作り方を選べば、外に頼んでも撮影の日程・機材・出演者の調整を減らせます。実写・AI・その組み合わせで費用がどう違うかは、AI動画制作の費用相場|実写・フルAI・ハイブリッドを比較で比べています。

判断を間違えやすい5つのポイント

  1. 給与だけで社内の費用を計算する:会社が負担する社会保険や、確認する人の時間が抜ける
  2. 外に頼む見積額だけを見る:素材の準備や社内の確認が残っている
  3. 1本だけで判断する:作り続ける本数と、毎月かかる代金の割り振りが入らない
  4. 同じ動画だと思い込む:長さ、画面サイズ、字幕、権利、修正回数が違う
  5. 失敗したときの費用を入れない:やり直し、公開の延期、売り逃し、差し替えが起きる

参考:pitattoの場合

ここまで一般的な比べ方を書いてきたので、自社のサービスについても書いておきます。pitattoはオリジナル楽曲付きの広告動画を75,000円(税込)〜、最短7日で制作しています。撮影の工程を持たないので、外に頼んでも撮影の日程・機材・出演者の調整がいりません。

  • 社内に残る作業が少ない:素材・撮影・出演者の用意は不要で、サービスサイトのURLとヒアリングシートの記入だけでご依頼いただけます。手元に素材がある場合は、それを活かして作ることもできます
  • 音楽の権利の確認が制作に含まれる:楽曲は毎回オリジナルで作り、楽曲・映像ともに商用で使えるライセンスが済んでいます
  • 修正は、文字・長さ・色味・字幕を2回まで無料:音楽の修正の工程は設けていません。その分、制作に入る前のヒアリングで、世界観と伝えることを言葉にして固めます

下の動画は、実写の素材とオリジナル楽曲を組み合わせた制作例です。社内の素材を活かしながら、編集と音楽の工程を外に分ける作り方のイメージです。

ハイブリッド
実写素材とオリジナル楽曲を組み合わせた制作例。社内素材を活かしながら、編集・音楽の工程を外部へ分けるハイブリッドのイメージです

向かないケースも書いておきます。実在の店舗やスタッフ、作業の風景そのものを見せることが成果に直結する場合は、撮影の体制を持つ制作会社か、社内のチームで作るほうが合います。依頼先は、金額だけでなく、必要な工程を持っているかで選んでください。

詳しく知りたい方向け:自社の数字で計算する方法

社内で作る費用と外に頼む費用を、同じ物差しで計算する方法です。経理の方と一緒に数字を入れる場面を想定しています。

社内で作る費用の式

社内で作る費用 = 担当者の時間の費用 + 会社負担分 + ソフト・機材 + 外から買う素材 + 管理・確認の時間 + やり直し・本来の仕事を止めた分

1時間あたりの費用を出す

1時間あたりの費用 = 会社が負担する年間の総額 ÷ 1年で実際に制作に使える時間

年間の総額には、給与・賞与だけでなく、会社負担の社会保険、通勤費、福利厚生などを含めます。厚生年金は会社と本人が半分ずつ負担する制度ですが、健康保険の料率などは加入先や地域で異なります。「給与の何割」と決め打ちせず、自社の給与台帳や経理のデータで確認してください。

割る時間にも注意が必要です。年間の所定労働時間をそのまま使うと、会議・営業・休暇・研修・待ち時間まで、制作に使える時間として数えてしまいます。制作に使った時間を実際に測れるなら、その数字を使います。

2人以上が関わるなら、役割ごとに積み上げる

企画、撮影、編集、確認をする人の1時間あたりの費用は、同じとは限りません。役割ごとに「1時間あたりの費用 × 使った時間」を出して足します。

役割 1時間あたりの費用 制作に使った時間
企画・構成 自社で計算 __時間
撮影・素材の準備 自社で計算 __時間
編集 自社で計算 __時間
確認・承認 確認する人ごとに計算 __時間
投稿・報告 担当者ごとに計算 __時間

ソフト・機材は、毎月の代金と購入代金に分ける

編集ソフト、素材サイト、データの保存先、フォント、音楽、パソコン、カメラ、照明、マイク。社内で作るのに必要なものは、動画を作らない月にも費用がかかります。

1本あたりの設備費 = 毎月の固定費 ÷ その月に作った本数 + 機材の1か月分の利用分

機材は、買った金額を最初の月に全部入れるのではなく、使う期間に応じて割り振ると比べやすくなります。税務上の減価償却と、社内の判断のための割り振りは目的が違うので、会計の処理は税理士に確認してください。国税庁も、減価償却資産は使える期間にわたって取得費を配分する考え方を説明しています。

外に頼む費用の式

外に頼む費用 = 見積額 + 社内の企画・素材準備・確認の時間 + 追加の修正 + 納品の形・権利の追加費用

仮の数字で計算した例

計算のしかたを示すための仮の条件です。以下の金額は市場の相場でも、pitattoの実績でもありません。自社の数字に置き換えて使ってください。

担当者の1時間あたりの費用を4,500円、確認する人を5,500円とします。社内で作る場合、企画・台本・撮影・編集・確認に担当者が合計29時間、確認する人が3時間かかり、ソフトや素材の割り振りが8,000円だとします。

項目 計算 仮の費用
担当者(企画・撮影・編集) 4,500円×29時間 130,500円
確認・承認 5,500円×3時間 16,500円
ソフト・素材・機材の割り振り 1本分 8,000円
社内で作る場合の合計 — 155,000円

同じ動画を外に頼み、見積額が110,000円だったとします。頼んだあとも、社内の確認に3時間、素材の準備に2時間、公開の作業に1時間、合わせて6時間かかるとします。

項目 計算 仮の費用
見積額 — 110,000円
素材の準備・公開 4,500円×3時間 13,500円
社内の確認 5,500円×3時間 16,500円
外に頼む場合の合計 — 140,000円

見積書だけを見ると、外に頼む110,000円に対して、社内で作る費用は分かりにくい状態です。同じ条件にそろえると、外に頼む場合が140,000円、社内で作る場合が155,000円で、差は15,000円です。ここに納期、仕上がり、担当者の本来の仕事、やり直しの可能性を加えると、判断はさらに変わります。

この数字を、そのまま自社の判断に使わないでください。本数、1時間あたりの費用、制作の時間、確認する人数、頼む範囲を自社の値に入れ替えて計算します。

比較表に自社の数字を入れる

項目 社内で作る 外に頼む
年間・月間の制作本数 __本 __本
1本あたりの制作時間 __時間 社内__時間
1時間あたりの会社負担の費用 __円 社内の担当__円
ソフト・機材・素材 __円 見積に含む/__円
外に払う費用 — __円
修正・追加・権利 __円 __円
納品までの日数 __日 __日
1本あたりの本当の費用 __円 __円

表は一度作って終わりにせず、まず3本分を仮に入れて、実際にかかった時間との差を確かめます。社内で作る手間が予想より増えたら、型を決めるか、一部を外に頼むことを考えます。外に頼んだあとの社内の手間が増えたら、依頼の書き方や確認の窓口を見直します。

まとめ:安さではなく、同じ動画を作る本当の費用で決める

  1. 同じ動画の条件を決める(本数、長さ、媒体、修正、権利、納期)
  2. 社内の1時間あたりの費用を、会社負担分と実際に使える時間から出す
  3. 社内での企画・撮影・編集・確認・投稿を、すべて時間に直す
  4. 外に頼む費用に、頼んだあとも残る社内の時間と追加費用を足す
  5. 本数・納期・仕上がり・失敗したときの損を含めて、社内・外・分担を選ぶ

社内で作るほうが安い会社もあれば、外に頼むほうが安い会社もあります。違いを生むのは、1時間あたりの費用、作る本数、型があるか、確認の体制、そして動画を作る目的です。見積書の金額だけで決めず、社内の時間も同じお金の単位に直して比べてください。

よくある質問

動画は、社内で作ったほうが安いですか。

作る本数、担当者の時間、確認する人数で変わります。社内で作る費用は見積書に出ないだけで、担当者と確認する人の時間、ソフト・機材の代金がかかっています。同じ条件にそろえて比べると、外に頼むほうが安くなる場合もあります。

1本だけ作りたい場合は、どちらがいいですか。

外に頼むほうが有利になりやすいです。社内で作ると、ソフト・機材の毎月の代金や、担当者を育てる手間を1本で負担することになります。毎月決まった本数を作り続けるなら、社内で作るか、工程ごとに分けることも考えてください。

外に頼めば、社内の手間はなくなりますか。

なくなりません。目的と伝えることを決める、素材をそろえる、社内の確認をまとめる、納品された動画を載せて成果を確かめるといった作業は社内に残ります。頼む側で目的や素材が整理できていれば、外の会社の手間が減り、費用を抑えられることもあります。

社内で作る費用は、給与を働く時間で割れば分かりますか。

それだけでは足りません。会社負担の社会保険、通勤費、福利厚生まで含めた年間の総額を、実際に制作に使える時間で割ります。そのうえで、確認する人の時間や、ソフト・機材の代金も足します。

社内と外の両方を使うことはできますか。

できます。企画と素材の優先順位を社内で決めて編集だけを頼む、社内の素材を渡して広告用の構成と編集を頼む、といった分け方があります。1つに決めるより、工程ごとに分けるほうが合理的なことも多いです。

参考にした公式情報