Instagram・Facebook の Reels、TikTok、YouTube Shorts は、どれも縦型の9:16動画が中心です。ところが同じ1本をそのまま3媒体に上げると、字幕がUIに隠れる・投稿後に画質が落ちる・そもそも冒頭で飛ばされるといったことが起きます。9:16に揃えることと、9:16向けに設計することは別だからです。

この記事では、Meta・TikTok・YouTube の公式ガイドをもとに、三媒体の仕様を1枚の対応表に整理したうえで、共通の書き出し設定、安全領域、冒頭の作り方、媒体別に変えるべき点、投稿後のトラブル対処までをまとめます。仕様は更新されるため、公開前には各媒体の投稿画面・広告プレビューでも必ず確認してください(本記事の調査基準日:2026年8月)。

この記事の結論を先に

  • 共通マスターは1080×1920・H.264・30fps・8〜12Mbps・AAC-LC 48kHz。ここを揃えれば三媒体で使い回せる
  • 1080p素材を1440pに引き伸ばしても情報量は増えない。解像度より重要なのはビットレートと再圧縮を避けること
  • 入稿できる長さと、成果が出る長さは違う。集客用途はまず15〜60秒で検証する
  • 安全領域は「下部と右側を空ける」。1080×1920なら下480〜520px・左右86pxが実務上の目安
  • 共通マスターは1本、投稿は媒体別に3本。変えるのは冒頭・字幕位置・カバー・音源・CTAの5点だけでよい

三媒体共通の書き出し設定

先に結論となる設定から示します。これを「共通マスター」として1本作り、そこから媒体別に派生させるのがいちばん手戻りが少ない進め方です。

設定項目 共通マスターの推奨値
シーケンス 1080×1920px(9:16)/正方形ピクセル
フレームレート 30fps(動きが多い素材・スロー用途は60fpsを維持)
走査方式 プログレッシブ
コンテナ/コーデック MP4/H.264 High Profile(Level 4.1前後)
ビットレート VBR・目標8〜12Mbps/最大12〜16Mbps
キーフレーム間隔 2秒を目安
色空間 Rec.709(SDRに統一)
音声 AAC-LC・48kHz・ステレオ・192〜320kbps
音量の社内基準 -16〜-14 LUFS-I/True Peak -1dBTP以下

音量の数値は三媒体が定める必須要件ではなく、案件をまたいで音量差やクリッピングを出さないための制作側の運用基準です。書き出し後は、スマホ本体スピーカー・イヤホン・消音の3条件で必ず確認してください。

なぜ1440pではなく1080×1920なのか

Metaの現行のReels広告ガイドには推奨解像度として1440×2560pxが表示されます。一方でTikTokの広告仕様は縦型540×960px以上、YouTubeは1080p動画に8Mbps(高フレームレートなら12Mbps)を推奨、という具合に基準がそろっていません。三媒体を横断して運用するなら、実務上の最大公約数は1080×1920pxです。

そして、元素材が1080pしかないときに書き出し解像度だけ1440pへ上げても、実際のディテールは増えません。画質の体感を決めているのは解像度よりもビットレートと圧縮回数です。撮影→編集→書き出し→メッセージアプリで共有→再ダウンロード→投稿、と経由するほど劣化します。完成ファイルはクラウドか有線で受け渡し、各媒体へ元ファイルから直接アップロードしてください。

Meta・TikTok・YouTube Shorts 仕様対応表

媒体ごとに異なる部分だけを抜き出した対応表です。オーガニック投稿と広告では条件が変わる点に注意してください。

項目 Meta Reels(Instagram・Facebook) TikTok YouTube Shorts
推奨アスペクト比 9:16(Instagramの投稿自体は1.91:1〜9:16に対応) 9:16 正方形または縦長で3分以内がShorts扱い。制作は9:16推奨
解像度の公式情報 現行Reels広告ガイドは1440×2560px 広告は縦型540×960px以上 一般アップロードの推奨設定が適用
オーガニックの長さ 最大20分の作成に対応。ただし3分超は新規層へのおすすめ対象になりにくい アプリ撮影は最大10分、アップロードは最大60分 最大3分
広告・ブーストの長さ Reels広告は最大15分。ブースト対象のReelは90秒以内・9:16 オークション型In-Feedは最大10分。予約型は5〜60秒(9〜15秒推奨) 広告フォーマットにより異なる
コーデック/音声 H.264(Facebook ReelsはH.265も可)/AAC・48kHz推奨 MP4等。横断運用はH.264/音声あり前提、予約型広告は音声必須 H.264 High Profile/AAC-LCは48kHz推奨
ビットレート Reels固有の一律値は公式に明示なし オークション広告516kbps以上/予約型2.5Mbps以上 SDR 1080pで8Mbps(高fpsは12Mbps)
カバー・サムネイル 動画フレームか端末内画像を選択可。推奨420×654px 投稿前に動画内フレームを選択 カスタムサムネイル不可。動画内フレームを選び、公開後は変更できない
字幕 自動字幕あり。広告では任意だが推奨 自動キャプションあり。広告キャプションは白色固定でリンク不可 自動字幕・字幕ファイル(SRT等)に対応
音源の制限 ライセンス楽曲を含むReelはブースト・広告利用に制限 1分超のShortsで有効なContent ID申し立てがあると全世界でブロックの可能性

入稿できる長さと、成果が出る長さは違う

この表でいちばん誤読されやすいのが長さの欄です。TikTokのオークション型In-Feed広告は最大10分を受け付けますが、予約型のTopViewでは9〜15秒が推奨されています。Instagramも長尺の作成に対応する一方、3分を超えるReelsは新規オーディエンスへのおすすめ対象になりにくいと公式ヘルプが案内しています。

上限いっぱいまで使えることと、その長さが成果につながることは別です。集客目的なら、まず15〜60秒を中心に検証し、説明が必要な商材の場合だけ長尺化する。判断は尺そのものではなく「価値のない時間を削れているか」で行ってください。

カバー画像と音源は、投稿前にしか決められない

後から取り返しがつかない項目が2つあります。YouTube Shortsはカスタムサムネイルをアップロードできず、選んだ動画内フレームを公開後に変更できません。編集段階で「カバーに使える1フレーム」を意図的に作っておく必要があります。Instagramのカバー推奨サイズは420×654px(約1:1.55)で9:16とは比率が違うため、プロフィールのグリッド表示で文字や人物が切れないかを確認します。

音源も同じです。投稿できたからといって広告に使えるとは限りません。オーガニック利用・広告利用・二次利用を分けた音源台帳を持ち、広告に回す可能性がある動画には最初からオリジナル音源かロイヤリティフリー音源を使ってください。公開後の差し替えは、制作し直すより高くつきます。

字幕とCTAを隠さない安全領域

縦型で最も多い事故が「重要な文字がUIに隠れる」です。画面下部にはキャプション・投稿者名・広告CTAが、右側には反応ボタンが重なります。

MetaのReels広告ガイドでは、素材の上部約14%・下部約35%・左右約6%を重要情報から空ける目安が示されます。TikTokの安全領域は動画寸法やキャプションの長さ、広告アドオンによって変わるため固定値がなく、公式テンプレートと広告プレビューでの確認が前提になります。

そこで、横断運用向けの保守的な社内基準として次の値を使います。これは公式三社共通の数値ではなく、どの媒体でも破綻しないようにするための制作基準です。

対象 1080×1920pxでの目安
左右 各約86pxを空ける
上部 約230pxを空ける
下部(通常投稿) 約480〜520pxを空ける
下部(Meta広告として使う派生版) 約670pxまで空ける

画面の役割分担も決めておくと、レイアウトのブレがなくなります。上部=短いテーマ名、中央上部=顔・商品・主要な動作、中央=主字幕と実演、中央下部=補助字幕や図解、最下部と右側は原則として余白。電話番号や価格、押してほしいボタン風の表示を最下部に置くのは避けてください。

字幕そのものは、1画面1メッセージが基本です。日本語なら1行12〜18文字・最大2行を目安に、意味の切れ目で分割します。文字には背景帯・半透明ボックス・縁取りのいずれかを付け、明るい映像の上に白文字を直接置かないこと。スマホの実寸で読めるか、必ず実機で確認します。

冒頭の設計|「3秒」の正しい扱い方

縦型の解説でよく見る「冒頭3秒」は、三媒体共通のアルゴリズム上の合否ラインではありません。TikTokは公式資料で最初の3〜6秒を重要なフック区間としていますが、MetaやYouTubeが「3秒で評価が確定する」と説明しているわけではありません。3秒は、スワイプされる前に見る理由を伝えきるための、制作上の区切りと理解してください。

冒頭で必要なのは派手な演出ではなく、瞬時に理解できる情報です。次の要素のうち2つ以上を1秒以内に提示します。

要素 ありがちな冒頭 改善例
対象者 「今日は動画について説明します」 「店舗集客にInstagramを使っている方へ」
課題 ロゴと抽象的なコピー 「再生されても予約が増えない原因」
結果 「便利なサービスです」 「問い合わせ率が上がるCTAの置き方を30秒で」
証拠 実績が後半まで出てこない 冒頭に管理画面・ビフォーアフター・数値を短く表示

ブランドの見せ方も同じ考え方です。TikTokの公式分析では、上位のブランドリフトクリエイティブの95%が大きなロゴカードから始まっていなかった一方、2秒程度のブランド露出で想起向上の半分を捉えられるとの示唆もあります。ロゴカードで開始するのではなく、商品・人物・制服・店舗・画面UIといった「内容の中のブランド資産」として早めに認識させるのが正解です。フックの具体的な型は動画広告の最初の3秒でスクロールを止めるフック12パターンで詳しく扱っています。

下の動画は、実写素材にオリジナル楽曲を掛け合わせて制作した9:16の広告動画です。冒頭から音と映像が同時に立ち上がる構成で、無音の前置きを作っていません。

ハイブリッド
実写素材とオリジナル楽曲を組み合わせた9:16の広告動画。冒頭に無音の前置きを置かず、字幕は中央帯に収めています

CTAは末尾だけに置く必要はありません。中盤で「最後に書き出し設定も出します」と次への期待を作り、終盤で行動を1つに絞る。フォロー・保存・コメント・資料請求・相談予約をまとめて要求すると、どれも実行されません。1動画1CTAが原則です。「詳しくはこちら」だけでは押す場所が分からないため、「プロフィールのリンク」「概要欄」「画面下のボタン」と、媒体に応じた行動位置を言葉と映像の両方で示します。

同じ動画を3媒体にそのまま出さない

共通マスターは1本で構いませんが、投稿は媒体別に派生させます。作り直すのではなく、変えるのは次の5点だけです。

変える点 具体的な作業
字幕位置 Meta広告版は下部を約670pxまで空ける。TikTokは右側の反応ボタンとキャプション幅を再確認
冒頭 媒体ごとの視聴文脈に合わせて1〜3秒を差し替える
ブースト前提のReelは90秒以内、TikTok予約型は9〜15秒、Shortsは3分以内
カバー Instagramは420×654px想定、Shortsは動画内フレームを事前に用意
音源・テキスト 広告利用可否を確認。キャプションと検索語を媒体ごとに調整

他媒体の透かしが入ったまま転載するのも避けてください。再利用感が強く、自社のブランドより他媒体のロゴが目立ちます。透かしのない編集マスターから、各媒体へ書き出すのが基本です。

投稿後によくあるトラブルと対処

症状 主な原因 対処
投稿後に画質が落ちる 低ビットレート、多段圧縮、過度な拡大 編集アプリの共有機能を使わず、1080×1920・8〜12Mbpsのマスターを書き出してネイティブにアップロード
細かい文字がにじむ 小さく細いフォント、背景とのコントラスト不足 文字を大きく・太く。背景帯や縁取りを付ける
横向き・黒帯になる シーケンスが16:9、回転メタデータの解釈違い 最初から1080×1920のシーケンスで作り、回転を確定して書き出す
字幕が後半ほどずれる 可変フレームレート素材、音声サンプルレートの不一致 固定フレームレートに変換し、48kHzへ統一。字幕は最終タイムラインから書き出す
字幕がUIに隠れる 媒体別プレビューをしていない 各媒体の下書き・広告プレビューで全カットを確認
音が小さい/割れる マイク距離、録音レベル、過度なノーマライズ ナレーションを先に整えBGMを下げる。True Peakは-1dBTP以下に
BGMが消える・投稿できない 音源ライセンス、Content ID、広告利用不可 利用範囲別に音源台帳を作り、広告用は商用可の音源に限定する

自動字幕を使う場合は、固有名詞・数字・専門用語の誤認識を必ず校正してください。焼き込み字幕とネイティブ字幕が二重表示されないかも、投稿前の確認項目です。

公開前チェックリスト

投稿ボタンを押す前に

  • 1フレーム目で、対象者・課題・結果のいずれかが分かる
  • 3秒以内に、見続ける利益が示されている
  • 重要な人物・文字が下部と右側のUI領域に入っていない
  • 消音でも字幕だけで要点と結論が伝わる
  • CTAが1つに絞られ、押す場所と次の行動が分かる
  • 楽曲・画像・人物・店舗・顧客情報の許諾を確認済み

まとめ|数字を追う順番を間違えない

縦型動画は「仕様を合わせる作業」だと思われがちですが、仕様はスタートラインにすぎません。1080×1920・H.264・8〜12Mbps・48kHzという共通マスターを一度決めてしまえば、以降は毎回悩む必要がなくなります。本当に成果を分けるのは、冒頭1秒の情報量、安全領域の守り方、CTAを1つに絞れているかです。

そして、再生回数を最終KPIにしないこと。見るべき順番は次のとおりです。

段階 見る指標 改善対象
視聴開始 冒頭の維持率、3秒前後の残存率 1フレーム目、フック、画面内テキスト
内容理解 平均視聴時間、完了率、保存 構成、テンポ、字幕、具体性
興味・比較 プロフィール閲覧、説明欄の展開、共有 信頼要素、事例、差別化
行動 リンククリック、資料請求、相談予約 CTA、遷移先、フォーム
商談・売上 有効問い合わせ率、商談化率 オファー、ターゲティング、営業連携

この順に見ていくと、直すべき場所が特定できます。冒頭の残存率が低いなら1フレーム目、最後まで見られているのにクリックされないならCTAと遷移先です。数字が動かないときに動画そのものを作り直す前に、まずどの段階で落ちているかを確認してください。制作を外注に切り替えるかどうかの判断も、この切り分けができてからのほうが精度が上がります(費用感はSNS動画制作の費用相場|内訳と安く抑える現実的な方法を参照)。

参考にした出典

  • Meta Ads Guide「Instagram Reels 動画広告」— 解像度、字幕、音声に関する広告仕様
  • Meta「配置別アスペクト比のベストプラクティス」— Reels・Storiesでの9:16推奨、安全領域の目安
  • Meta「Facebook Reelsの要件」— コーデック、フレームレート、音声
  • Instagramヘルプセンター「リールのサイズとアスペクト比」「リール動画を撮影する」— 対応比率、カバー画像420×654px
  • Instagramヘルプセンター「Instagramリールをブーストする」— 90秒以内・9:16、ライセンス楽曲の制限
  • TikTok Ads Manager「Auction In-Feed Ads」— 540×960px以上、最大10分、516kbps以上、500MB以下
  • TikTok Ads Manager「TopView Ads」— 5〜60秒、9〜15秒推奨、2.5Mbps以上
  • TikTok「Creative Codes」— フック・本文・クロージング、冒頭3〜6秒、ロゴカードとブランド露出の分析
  • TikTok「おすすめフィードの仕組み」— ユーザー反応と動画情報の扱い
  • TikTokヘルプ「動画のアクセシビリティ」— 自動キャプション
  • YouTubeヘルプ「推奨アップロードエンコード設定」— MP4、H.264、AAC、1080pのビットレート
  • YouTubeヘルプ「3分間のShorts」「ショート動画をアップロードする」— 長さと比率の分類条件、Content IDの制限
  • YouTubeヘルプ「字幕を追加する」「Shortsのサムネイル」— 字幕ファイル対応、公開後のサムネイル変更制限
  • YouTubeアナリティクス ヘルプ — Shortsの視聴者維持と流入の確認方法
  • Think with Google「YouTube ABCDs」— Attention / Branding / Connection / Direction
  • Mulier ほか, Journal of Interactive Marketing — モバイル縦型動画広告と消費者反応に関するフィールド研究