生成AIの普及により、SNSやWeb広告など、さまざまな場所でAIを活用した動画を目にする機会が増えてきました。

以前は「AIでこんな映像が作れるのか」というだけでも驚きがありましたが、AI動画そのものが珍しくなくなった今、

「またAIで作った動画か……」

と感じる人も少なからずいるのではないでしょうか。

こうした状況を見ると、

「AI動画は結局見てもらえないのでは?」
「商用動画にAIを使う意味はあるのか?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、実際にAIを活用した動画制作を続けてきたPitattoでは、AI動画は使い方次第で大きな武器になると考えています。

重要なのは、AIであること自体ではありません。

また、どれだけ実写に近い映像を作れるかだけでもありません。

AI動画を商用で活用するうえで重要なのは、

「誰に何を伝えるのか」という訴求設計と、AIだからこそ実現できる独自性です。

今回は、実際にAI動画制作に取り組んできたPitattoの視点から、AI動画を効果的に活用するための考え方について紹介します。

この記事の結論

  • AI動画の価値は「実写にどれだけ近いか」では決まらない
  • 実写そっくりを目指しすぎると、スピードと低コストというAIの強みが消える
  • 実写で撮れる企画をそのままAIで再現すると、AIの弱点だけが目立つ
  • AI動画は「AI動画として成立する企画」で考える
  • ただし派手なだけでは足りない。商品の訴求内容と表現がつながっていることが前提
  • 意識するのは 映像クオリティ × 訴求内容 × 独自性 の3つ
  • AIはコスト削減の技術ではなく、これまで諦めていた企画を試せるようにする技術
  • 複数案を出して反応を見ながら改善できるSNS広告と相性が良い

「実写と見分けがつかない」を目指しすぎることの罠

生成AIの動画品質は年々向上しており、人物の動きや表情、背景なども非常にリアルに生成できるようになっています。

そのため、AI動画を制作していると、

「もっと人物を自然にしたい」
「もっと実写っぽくしたい」
「この違和感を完全になくしたい」

と、つい細かな部分までクオリティを追求したくなります。

もちろん、最低限の映像品質は必要です。

ただし、「実写と見分けがつかないこと」を目的にしてしまうと、AIを使うメリットそのものが薄れてしまう場合があります。

実写らしさを追いすぎることで再生成・修正が増え、スピードと低コストというAIのメリットが薄れていく流れを6段階で示した図
「もっとリアルに」から始まった調整が、再生成と修正を呼び、最終的にAIの強みだったスピード・低コスト・柔軟な表現を削っていきます。

より高性能な生成モデルを使用し、納得できる映像が出るまで何度も生成を繰り返す。

さらに細かな違和感をなくすために編集や修正を重ねる。

こうした工程が増えれば、当然ながら生成コストだけでなく、制作時間やディレクション工数も増えていきます。

場合によっては、本来AI動画のメリットだったはずの「スピード」や「低コスト」が失われてしまうこともあります。

PitattoでもAI動画を制作する中で、単純に生成回数を増やせば良い動画になるわけではないと感じています。

大切なのは、映像の細部を100点に近づけることよりも、その動画全体として何を伝えたいのかを考えることです。

AI動画を「実写動画の廉価版」にしない

AI動画を活用するときに注意したいのが、実写動画とまったく同じ企画を、そのままAIで再現しようとすることです。

例えば、

「オフィスで社員が商品を紹介する」
「モデルが商品を手に取って説明する」

といった、通常の実写撮影でも簡単に成立する企画をAIで再現した場合を考えてみます。

人物の表情や手の動きに少しでも不自然さがあると、視聴者はその部分に目が行ってしまいます。

実写であれば自然に成立する映像なのに、AIで再現することで逆に違和感が目立ってしまうことがあります。

実写の代替としてAIを使った悪い使い方と、AIならではの表現を活かした良い使い方を並べて比較した図
左は実写でできる企画をそのままAIで再現した状態。わずかな違和感が弱点として目立ちます。右はAIにしかできない表現を企画に組み込んだ状態で、同じ「AIらしさ」が強みとして働きます。

つまり、

「実写で作れるものを、AIでどれだけ実写っぽく再現できるか」

という勝負をすると、AIの弱点が目立ちやすくなります。

そこで私たちが重要だと考えているのが、

AI動画は、AI動画として成立する企画を考えることです。

AIだからこそできる表現を使う

生成AIの大きなメリットは、現実の撮影条件に縛られないことです。

例えば、

  • 商品が街よりも巨大になる
  • オフィスが一瞬で宇宙空間に変わる
  • 商品の中に入り込んで内部構造を見せる
  • 現実には存在しないキャラクターが登場する
  • 東京から海外、宇宙まで数秒で舞台が変化する

といった表現も可能です。

商品の巨大化、空間の変化、商品内部への没入、非現実のキャラクター、大胆なカット割り、独自の世界観という6つのAIならではの表現例を並べた図
いずれも実写やCGでも制作できますが、撮影規模や制作期間の制約で通常の広告では実現しにくかった企画です。AIはこの部分のハードルを下げます。

もちろん、こうした映像は実写やCG・VFXでも制作できます。

しかし、大掛かりな撮影やCG制作が必要になるため、予算や制作期間の問題から、通常の広告ではなかなか実現できない企画も少なくありません。

AIを使えば、こうした現実では制作ハードルの高かったアイデアを、比較的手軽に映像化できるようになります。

これこそが、AI動画ならではの大きなメリットの一つだと私たちは考えています。

例えば商品の「軽さ」を伝えるために、商品が雲の上を浮かんでいる映像を作る。

商品の「圧倒的な大きさ」を表現するために、商品がビルより巨大になって街中に登場する。

こうした表現であれば、

「AIで作っているから違和感がある」

ではなく、

「AIだからこんな映像が作れるのか」

という方向に視聴者の印象を変えることができます。

同じ商品でも、前半(実写の代替として使う)は細かな違和感に目が行き、後半(AIならではの表現を活かす)は表現そのものが印象に残ります。

AIを使っていることを隠すのではなく、AIを使っていること自体が企画の強みになる状態を作ることが重要です。

ただ「ぶっ飛んだ映像」を作ればいいわけではない

ここでもう一つ重要なのが、単純にインパクトのある映像を作れば良いわけではないということです。

AIを使えば、現実ではあり得ない映像を簡単に作ることができます。

だからといって、

「とにかく派手にする」
「とにかく変わった映像にする」

だけでは、商業用動画として十分とは言えません。

よくある失敗

例えば化粧品の広告なのに、突然商品が宇宙を飛び回ったとしても、その映像と商品の魅力が結び付いていなければ、視聴者には何も残らない可能性があります。

重要なのは、

商品の訴求内容と、AIならではの表現をつなげることです。

「なぜこの映像なのか?」

という理由が商品の特徴やメリットにつながっていることが重要です。

AIは企画そのものを良くしてくれる魔法の道具ではありません。

あくまで、良い企画を今まで以上に自由に映像化できる手段だと考えるべきです。

商業動画では「何を伝えるか」が重要

これはAI動画に限った話ではありませんが、広告やサービス紹介などの商業動画では、映像のクオリティだけで成果が決まるわけではありません。

どれだけ美しい映像だったとしても、

「誰向けの商品なのか」
「どんなメリットがあるのか」
「なぜこの商品を選ぶべきなのか」

が伝わらなければ、広告として十分に機能しない可能性があります。

反対に、映像に多少AIらしさが残っていたとしても、

「この悩み、自分のことだ」
「この商品なら解決できそう」
「ちょっと使ってみたい」

と思ってもらえる内容になっていれば、ターゲットに刺さる動画になる可能性があります。

そのため、PitattoではAI動画を制作する際にも、

映像クオリティ × 訴求内容 × 独自性

の3つを意識することが重要だと考えています。

商業動画で重要な3要素として、映像クオリティ・訴求内容・独自性を並べて説明した図
映像クオリティは「最低限の見やすさ・違和感の少なさ」まで確保できていれば十分です。残りの力は、訴求内容と独自性に配分します。

映像クオリティだけを100点にするために予算や時間を使うのではなく、十分な映像品質を確保したうえで、

「誰に」
「何を」
「どのように伝えるのか」

を考えることが、商業動画では非常に重要です。

AIは「安く動画を作るためだけの技術」ではない

AI動画というと、

「実写より安く動画を作れる」

というメリットが注目されがちです。

確かに、撮影場所や出演者、大規模な撮影機材などを必要としないケースでは、制作コストを抑えられる可能性があります。

ただ、PitattoではAIの価値は単純なコスト削減だけではないと考えています。

むしろ、

これまでコストや撮影条件の問題で諦めていた企画を試せるようになること

に大きな価値があります。

「こんな動画が作れたら面白いけれど、撮影では難しい」

これまでならそこで諦めていたアイデアを、AIによって形にできるようになります。

AIは、実写動画を安く置き換えるためだけの技術ではありません。

動画制作における表現の選択肢を増やす技術と考えた方が、そのメリットを活かしやすくなります。

よくある捉え方

実写動画を安く置き換えるための技術

同じ企画を、より安く作る。比較の軸が「いくら下がったか」だけになります。

Pitattoの捉え方

動画制作における表現の選択肢を増やす技術

これまでコストや撮影条件の問題で諦めていた企画を、実際に試せるようになります。

AI動画とSNS広告は相性が良い

こうしたAI動画の特徴を考えると、私たちは特にSNS広告との相性が良いと考えています。

SNS広告では、一つの動画を完璧に仕上げて長期間使うだけではなく、複数のクリエイティブを用意しながら反応を見て改善していく運用が可能です。

複数パターンを作りやすいなどのAI動画の強みと、ABテストを回しやすいなどのSNS広告の運用特性を並べ、両者の相性の良さを示した図
AI動画の「たくさん作れる」と、SNS広告の「たくさん試して選べる」がかみ合います。1本を完璧にするより、複数案を試して伸ばす運用に向いています。

例えば、

  • 冒頭だけ違う動画
  • 訴求ポイントが違う動画
  • 映像表現が違う動画
  • ターゲットごとに内容を変えた動画

など、さまざまなパターンを試すことができます。

AIを活用すれば、これまで制作コストの問題で試しにくかった企画にもチャレンジしやすくなります。

一つの動画を「完璧」にすることだけにコストをかけるのではなく、

複数のアイデアを実際に動画にして、反応を見ながら改善していく。

こうした使い方こそ、AI動画の強みを活かした運用方法の一つだと考えています。

まとめ|重要なのは「AIを使うこと」ではなく「AIをどう使うか」

AI動画だから成果が出るわけではありません。

また、実写と見分けがつかないほどリアルな動画を作れば、必ず良い動画になるわけでもありません。

重要なのは、

AIの特徴を理解したうえで、そのメリットを企画や訴求に活かすことです。

実写では制作ハードルの高いアイデアを映像にする。

商品の魅力を、今までにない方法で表現する。

そして何より、

「誰に、何を伝えたいのか」

を明確にする。

AIを実写の代替として使うだけではなく、これまで実現できなかった企画を形にするための新しい制作手段として使うこと。

それが、これからAI動画を活用するうえで重要なのではないかと私たちは考えています。

Pitattoでは、長年動画制作に携わってきたスタッフによる企画・訴求設計と、生成AIによる自由な映像表現を組み合わせた動画制作を行っています。

「AIを使って何か面白い動画を作りたい」
「SNS広告用の動画をもっと試したい」
「この商品ならAIでどんな表現ができるか相談したい」

といった段階からでもご相談いただけます。

AI動画の活用をご検討されている方は、ぜひお気軽にPitattoまでお問い合わせください。