広告動画の台本を、白紙から書き始めていないでしょうか。「冒頭でインパクトを出して、商品を説明して、最後にCTAを入れる」——この程度の見取り図しかないまま撮影に入ると、撮った素材が足りない、編集で構成を組み直す、結局ナレーションを後から差し替える、という手戻りが起きます。

広告動画の構成は、毎回ゼロから発明するものではありません。成果が出ている広告は、いくつかの決まった型のどれかに当てはまります。型を先に選んでしまえば、あとは各カットに入れる中身を埋めるだけになり、企画から台本までの時間が大きく短くなります。

この記事では、広告動画で使える構成テンプレートを5種類に整理し、pitattoが実際の制作で使っている台本フォーマット(秒数・画面・セリフ・字幕・音を1枚で管理するシート)をそのまま公開します。冒頭3秒に何を置くかという「フックの型」は動画広告の最初の3秒でスクロールを止めるフック12パターンで扱っているため、ここでは冒頭から最後のCTAまで、1本を通した設計に絞ります。

この記事の結論

  • 構成は5つの型(問題解決・実演・ビフォーアフター・体験談・情報提供)から先に1つ選ぶ
  • 型を選ぶ基準は「見せれば伝わる商材か」「悩みが言語化されているか」の2軸
  • 台本は文章で書かず、秒数・画面・セリフ・字幕・音の5列の表で書く
  • 1本の広告で伝える主訴求は1つ。2つ入れると、どちらも伝わらない
  • 撮影前に「この素材で編集できるか」を台本の段階で確認する

構成テンプレートは「型」ではなく「決める順番」

テンプレートと聞くと、穴埋めすれば動画が完成する雛形を想像しがちです。しかし実務で効くのは、雛形そのものよりも決める順番が固定されることです。

台本が書けない原因は、たいてい文章力ではありません。「誰に向けた動画か」「何を1つだけ伝えるか」「見終わった人に何をしてほしいか」が決まっていない状態で、いきなりセリフを書き始めているからです。この3つが空欄のままだと、冒頭が決まらず、CTAも決まりません。

台本を書く前に、次の3行を埋めてください。ここが埋まらないうちは、テンプレートを選んでも手が止まります。

埋める項目 書き方 悪い例
誰に 状況まで書く(例:Meta広告を配信中で、クリックはあるが問い合わせが少ない担当者) 中小企業の経営者(広すぎて冒頭が決まらない)
何を1つだけ その人が確認できる変化を1つ(例:配信中の動画の改善点が分かる) 高品質な動画を低価格で短納期(3つある)
何をしてほしいか 遷移先で実際にできる行動(例:URLを入れて無料診断を申し込む) 興味を持ってもらう(行動になっていない)

3行が埋まったら、次の早見表で型を選びます。

5つの型の使い分け早見表

型の選択は好みではなく、商材の性質で決まります。判断は2つの問いだけです。①見せれば価値が伝わる商材か(実演可能性)、②買う側が悩みを言葉にできているか(課題の言語化)。

向いている条件 主な用途 相性のよい尺
1. 問題解決型 悩みが明確で、言葉で説明が必要な商材(BtoB、無形サービス) クリック・問い合わせ 15〜30秒
2. 実演・デモ型 動きや使用場面を見せれば価値が伝わる商材(物販、アプリ、設備) クリック・購入 6〜15秒
3. ビフォーアフター型 変化を画面で並べられる商材(施工、美容、整理、リフォーム) クリック・資料請求 10〜20秒
4. 体験談・証言型 導入判断に他者の評価が効く商材(高単価、検討期間が長い) 比較検討・再接触 20〜45秒
5. 情報提供型 まだ悩みが自覚されていない層に届ける商材 認知・リスト獲得 20〜45秒

尺は「入稿できる長さ」ではなく、構成を組むときの目安です。完了率だけで長短を判断すると短い動画が常に有利に見えるため、比較のしかたには注意が必要です。尺の決め方は動画広告は15秒と30秒どちらが正解かで扱っています。

迷ったときは1(問題解決型)から始めてください。もっとも汎用性が高く、他の型はここからの派生として理解できます。

テンプレート1:問題解決型

もっとも使用頻度が高い型です。視聴者が抱えている症状を先に画面に出し、原因、解決策、根拠、行動の順で並べます。悩みが言語化されている商材、特にBtoBや無形サービスと相性がよい構成です。

構成

秒数(15秒の場合) 役割 入れるもの
0〜3秒 症状の提示 視聴者が実際に見ている画面・状況。「〇〇なのに△△にならない」
3〜6秒 原因の言い換え その症状が起きる理由を1つに絞る。ここで自分ごと化が完了する
6〜10秒 解決策 商品・サービスが何をするのか。機能名ではなく動作で言う
10〜13秒 根拠 実績、事例、無料であること、期間などの安心材料を1つ
13〜15秒 行動 遷移先でできることを画面とナレーションの両方で示す

書くときの注意

  • 原因を2つ以上入れない。「ターゲットもクリエイティブもLPも悪い」と言うと、視聴者は自分の状況に当てはめられなくなります
  • 症状は視聴者の言葉で書く。「CVRの改善余地がある」ではなく「問い合わせが増えない」
  • 断定を避ける。「必ず解決します」「売上が10倍」といった表現は、景品表示法上の優良誤認・有利誤認のリスクがあります。確認できる範囲で書きます

セリフ例(15秒・無形サービス)

(0〜3秒)動画広告を出しているのに、問い合わせが増えない。
(3〜6秒)原因は動画の画質ではなく、冒頭で「誰向けか」が伝わっていないことかもしれません。
(6〜10秒)配信中の広告URLを送るだけで、CTRを下げている要因を3点に絞ってお返しします。
(10〜13秒)費用はかかりません。制作の依頼も不要です。
(13〜15秒)まずは無料クリエイティブ診断から。

テンプレート2:実演・デモ型

説明よりも、動いている画面を見せたほうが早い商材で使います。物販、アプリ、機材、設備、食品などが対象です。ナレーションは映像の補足に回り、主役は画面になります。

構成

秒数(10秒の場合) 役割 入れるもの
0〜2秒 結果を先に見せる もっとも見栄えのする瞬間。完成品、動作中の画面、使用後の状態
2〜5秒 手順の圧縮 使い方を3カット以内で。1カット1動作にする
5〜8秒 差分の明示 従来の方法との違い、または「これだけで済む」ことを画面で示す
8〜10秒 行動 商品名とCTAを同時に画面へ。音なし視聴を前提に文字で出す

書くときの注意

  • 順番どおりに見せない。実演は「手順1→2→3」ではなく、結果→手順の順に並べたほうが離脱が減ります
  • 手順を全部入れない。広告は説明書ではありません。入れるのは、価値が伝わる最短の3カットだけです
  • 撮影素材の枚数を台本に書く。「寄り」「引き」「手元」のどれが必要かを台本に明記しておかないと、編集で足りなくなります

テンプレート3:ビフォーアフター(比較)型

変化を画面で並べられる商材で強い型です。施工、リフォーム、清掃、整理、美容、書類のフォーマット改善など、「前」と「後」が視覚的に判別できることが条件になります。

構成

秒数(15秒の場合) 役割 入れるもの
0〜2秒 ビフォー 視聴者が「自分もこれだ」と思う状態。汚れ、散らかり、崩れた画面
2〜4秒 アフターの予告 完成状態を一瞬だけ見せる。ここで続きを見る理由が生まれる
4〜10秒 過程 何をしたのかを2〜3カット。作業者・道具・所要時間のどれかを入れる
10〜13秒 アフター 同じ画角・同じ明るさで見せる。画角が違うと信頼性が落ちる
13〜15秒 行動 費用感か所要期間を1つ添えてCTA

書くときの注意

  • 撮影条件を揃える。ビフォーとアフターで画角・照明・レンズが違うと、加工に見えます。台本の段階で「同一画角・三脚固定」と書いておきます
  • 効果の保証表現を避ける。個別事例の結果を全員に当てはまるように見せると、優良誤認にあたるおそれがあります。事例である旨を明示します
  • 健康・美容・医療は追加の規制が関係します。薬機法・医療広告ガイドラインの対象になる表現は、公開前に法務や専門家へ確認してください

テンプレート4:体験談・証言型

導入判断に他者の評価が効く商材、単価が高く検討期間が長い商材で使います。話者は実際の利用者、または実際の担当者です。ここを取り違えると規制の問題になります。

構成

秒数(30秒の場合) 役割 入れるもの
0〜3秒 結論から話す 導入して何が変わったかを話者の言葉で。挨拶と会社紹介から始めない
3〜10秒 導入前の状況 視聴者と同じ悩みだったことを具体的に。数字を出すなら根拠が必要
10〜20秒 選んだ理由 比較検討した過程。「なぜ他ではなくこれか」が入ると再現性が伝わる
20〜26秒 現在 使っている場面の映像を重ねる。話者の顔だけで20秒はもたない
26〜30秒 行動 企業側のナレーションまたはテロップでCTA

書くときの注意

  • 使っていない人に体験を語らせない。実際の利用者ではない出演者に体験談を述べさせる表現は避けます
  • 報酬・商品提供・依頼がある場合は広告であることを明示する。消費者庁のステルスマーケティング規制(景品表示法の指定告示)の対象になります
  • 長い台本を暗記させない。撮影者が質問し、答えてもらった素材を編集したほうが自然な表情になります

視聴者投稿のような語り口を広告に取り入れる場合の設計と権利確認は、UGC風広告動画の作り方にまとめています。

テンプレート5:情報提供(リスト)型

まだ悩みを自覚していない層に届ける型です。「〇〇の3つのコツ」「やってはいけない△△」のように、広告というより投稿の形に近づけます。認知や資料ダウンロードなど、その場で購入に至らない目的と相性がよい構成です。

構成

秒数(30秒の場合) 役割 入れるもの
0〜3秒 本数を宣言 「動画広告で失敗する3つの構成」など、何個あるかを先に言う
3〜10秒 1つ目 もっとも意外性のあるものを先に置く
10〜17秒 2つ目 画面内テキストで番号を出し、進行が分かるようにする
17〜24秒 3つ目 自社の解決策につながる項目を最後に置く
24〜30秒 行動 続きが載っている資料・記事・診断へ誘導する

書くときの注意

  • 項目は3つまで。5つ入れると1項目あたりが短くなり、どれも記憶に残りません
  • 番号を画面に出す。音なしで見られても進行が分かり、離脱位置の分析もしやすくなります
  • 売り込みを最後の1項目に集約する。各項目で商品名を出すと、情報提供の体裁が崩れます

そのまま使える台本フォーマット

型が決まったら、台本を書きます。ここで文章の台本(ナレーション原稿だけ)を書いてしまうと、撮影で素材が足りなくなります。pitattoでは、次の5列の表で台本を管理しています。撮影・編集・入稿までこの1枚で通せる形です。

秒数 画面(撮る・作るもの) セリフ/ナレーション 画面内テキスト(字幕)
0:00〜0:03 PC画面の広告管理画面/手元アップ(寄り・固定) 動画広告を出しているのに、問い合わせが増えない。 問い合わせが増えない BGMのみ/効果音1点
0:03〜0:06 担当者の表情(引き) 原因は画質ではなく、冒頭かもしれません。 原因は画質じゃない ナレーション主体
0:06〜0:10 診断結果のイメージ(画面収録) URLを送るだけで、要因を3点に絞ってお返しします。 URLを送るだけ/3点で回答 ナレーション主体
0:10〜0:13 費用表記のテロップ(静止) 費用はかかりません。 無料/制作依頼は不要 BGM上げ
0:13〜0:15 ロゴ+CTAボタン 無料クリエイティブ診断へ。 無料クリエイティブ診断 BGMフェードアウト

この5列にする理由

  • 「画面」列があると、撮影リストが自動的にできる。寄り/引き/手元、固定/手持ちまで書けば、撮影当日に迷いません
  • 「画面内テキスト」列を分けると、音なし視聴に耐えるか台本の段階で判定できる。この列だけを縦に読んで意味が通じなければ、字幕を書き直します
  • 「音」列があると、無音時に情報が欠けるカットが見つかる。ナレーションだけに情報を持たせているカットは、字幕へ移します
  • 秒数を先に切ると、入る文字数の上限が決まる。1秒あたりの読み上げは日本語で6〜7文字が目安です。15秒の動画にナレーション200文字は入りません

台本の下に必ず書く3項目

表の下に、次の3項目を添えます。これがないと、複数人で制作したときに判断がぶれます。

  1. この動画の主訴求(1文):迷ったときに立ち戻る基準になります
  2. 配信面と画角:リール/フィード/ストーリーズ、9:16/1:1/4:5。安全領域の確認は縦型動画(9:16)の設計ルールを参照
  3. 成果指標と判断日:この動画で何を見るのか、いつ判断するのか

尺を変えるときは、削る順番を決めておく

同じ企画で15秒版と30秒版を作るとき、30秒版を後ろから切って15秒にすると、CTAが消えて意味が壊れます。削るのは根拠と過程からです。

構成要素 15秒 30秒 45秒以上
症状・結果の提示 必須 必須 必須
原因・理由 1つ 1つ 1〜2つ
解決策 必須(動作で1文) 必須(手順まで) 必須(手順+条件)
根拠・実績 入れない、または一言 1つ 2つ
過程・使用場面 入れない 1〜2カット 3カット以上
注意点・対象外 入れない 入れない 入れる
CTA 必須 必須 必須(中間にも1回)

15秒版と30秒版を同じ役割で並走させると、どちらが効いたのか分からなくなります。15秒版を基本訴求、30秒版を理解促進用の派生として役割を分けると、比較の意味が出ます。

撮影前の台本チェックリスト

台本を書き終えたら、撮影に入る前に次を確認します。ここで見つかる不備は、撮影後には直せません。

  • 冒頭3秒の画面を静止画で切り出したとき、誰向けの広告か分かるか
  • 「画面内テキスト」列だけを読んで、意味が通じるか
  • 1本で伝えている主訴求は1つに収まっているか
  • 台本に書いたカットが、実際に撮影できる場所・人・許可の範囲か
  • ナレーションの文字数が、秒数に対して多すぎないか(1秒6〜7文字が目安)
  • CTAの文言と、遷移先ページのボタン文言が一致しているか
  • 効果・比較・数値の表現に、確認できる根拠があるか
  • 出演者・楽曲・映り込みの権利確認が済んでいるか

最後の2項目は、広告審査で止まる原因になりやすい部分です。特にSNSで通常使える音源が広告用途で使えるとは限らないため、楽曲は制作段階で利用範囲を確認してください。

実際の広告動画で構成を確認する

テンプレートは、実際の動画に当てはめてみると理解が早くなります。次はpitattoが制作した広告動画です。冒頭で何を見せ、どの順で情報を出し、最後に何をさせているかを、上の5列に分解しながら見てください。

アニメ調
pitattoが制作した広告動画の例。冒頭のカット、情報の出る順番、画面内テキストの量、CTAの位置を確認するための参考です

見るときのポイントは3つです。

  1. 0〜3秒で画面が何回変わったか:動きのない冒頭は飛ばされます
  2. 音を消しても内容が分かるか:分からなければ、字幕列の設計が足りていません
  3. 最後に押すボタンが想像できるか:CTAが「詳しくはこちら」だけになっていないか

自社の配信中の動画について、この分解が難しいと感じた場合は、第三者の視点を入れたほうが早いです。pitattoでは配信中または配信予定の広告動画を対象に、CTRを下げている要因を3点に絞って無料でフィードバックしています。構成のどこで離脱が起きているかを判断する材料として使えます。

やってはいけない台本

やりがちなこと 何が起きるか 代わりにすること
会社紹介から始める 視聴者は自分に関係あるか判断できず離脱する 視聴者の症状・結果から始める
訴求を3つ入れる どれも記憶に残らず、CTAも分散する 1本1訴求。訴求ごとに動画を分ける
ナレーション原稿だけ書く 撮影素材が足りず、編集で構成が崩れる 画面・字幕・音の列まで書く
字幕をナレーションの全文にする 文字が読み切れず、映像が見えなくなる 1カット1メッセージに要約する
30秒版を後ろから切って15秒にする CTAが消える 根拠と過程から削る
効果を断定する 優良誤認・有利誤認のリスク、審査落ち 確認できる範囲の表現にする

台本を直したあと、動画だけを差し替えても成果が変わらないことがあります。その場合は構成ではなく配信設定や遷移先が原因かもしれません。切り分けの手順は動画広告の効果が出ない5つの原因で解説しています。

まとめ:構成を決めてから、セリフを書く

広告動画の台本は、次の順番で作ります。

  1. 「誰に/何を1つ/何をしてほしいか」の3行を埋める
  2. 実演可能性と課題の言語化から、5つの型のうち1つを選ぶ
  3. 秒数・画面・セリフ・画面内テキスト・音の5列で台本を書く
  4. 台本の下に、主訴求・配信面と画角・成果指標と判断日を添える
  5. 撮影前チェックリストで、音なし視聴と権利・表現を確認する

この順番を固定するだけで、企画会議の時間は短くなり、撮影の手戻りも減ります。テンプレートの価値は、良い台本を自動で生むことではなく、決めるべきことを飛ばさないようにすることにあります。

そして、型を選んだあとにもっとも成果を左右するのは冒頭です。5つの型のどれを選んでも、0〜3秒に何を置くかで視聴が続くかどうかが決まります。冒頭の具体的な型は動画広告の最初の3秒でスクロールを止めるフック12パターンから選んでください。

参考にした公式情報