「Meta広告に動画を出してみたけど、この数字って良いんですか、悪いんですか」——制作のご相談で、いちばん多く聞かれる質問です。

先に答えを言うと、まずは1.5%を目安にしてください。実際に配信された8万本のMeta動画広告を集計した結果、全業種の平均が1.56%だったことに基づく数字です。

ただし、この1.5%をそのまま自社の目標にするのは危険です。業種によって「普通」の水準はまったく違いますし、そもそも広告の管理画面には「CTR」という名前の指標が4つもあり、どれを見ているかで数字が1.5倍くらい変わってしまうからです。ここを知らずに比較して、本当は悪くない広告を止めてしまうケースをよく見かけます。

この記事は「自分の数字が高いのか低いのかを判定する」ことだけに絞って書いています。判定したあと何を直すかは、記事内から個別の記事へリンクしています。

この記事の要点だけ先に

  • 比べる前に「リンクCTR」で統一する。ここを間違えると数字が1.5倍ずれる
  • 業種別の表は、業種同士を比べる表ではなく「自分の欄だけ見る」表
  • 外部の平均はゴールではなく、自分の位置を知るための地図
  • CTRだけ追わない。上がってもCPAが悪化していたら、それは失敗

まずここから:CTRとは何の数字か

CTR(クリック率)は、広告が表示された回数のうち、何%がクリックされたかを表す数字です。動画広告が10万回表示されて1,500回クリックされたら、CTRは1.5%になります。

CTR = クリック数 ÷ 表示回数(インプレッション)× 100

この記事に出てくる用語も、先に整理しておきます。

用語 意味
インプレッション 広告が画面に表示された回数。人数ではない
リーチ 広告が届いた人数
頻度(フリークエンシー) 1人あたり何回表示されたか(インプレッション÷リーチ)
リンククリック 広告からサイトなどに移動するためのクリック
LPV(ランディングページビュー) クリック後、リンク先のページが実際に表示された回数

押さえておきたいのは、インプレッションは「回数」であって「人数」ではないという点です。同じ人に3回表示されれば3インプレッション。だからCTRが下がったとき、「動画がつまらないから」ではなく「同じ人に見せすぎているから」というケースが普通にあります。

Meta広告の動画CTR平均は何%?

いきなり残念なお知らせですが、Metaは「業種別の動画広告CTR平均」を公式には発表していません。Metaが公開しているのは指標の定義までで、業種ごとの平均値は、広告運用会社や分析ツールの会社が自社データを集計して公開しているものを参考にするしかありません。

その中でいま最も参考になるのが、Billoというサービスが公開している集計データです。

2025年7〜12月に配信されたMeta動画広告 80,069本(広告費1億500万ドル、購入金額2億600万ドル)を集計。販売目的の動画広告におけるリンクCTRの全業種平均は1.56%だった。

サンプルが8万本と多く、集計方法(リンククリック÷インプレッション)も明記されているため、出発点として信頼できます。この1.56%を軸に、実務で使える評価の目安をまとめると次のようになります。

CTR 評価 まず何をするか
0.8%未満 低い 計測方法・冒頭3秒・ターゲット・配置を点検
0.8〜1.3% やや低い 金融・医療などでは問題ないこともある
1.3〜1.8% 標準 多くの動画広告で現実的な水準
1.8〜2.3% 良好 動画とターゲットが噛み合っている
2.3%以上 高い CVRやCPAが悪化していないか併せて確認

「2.3%以上でも確認が必要」と書いたのを、意外に思われたかもしれません。CTRが高いこと自体は、良いことの証明にはなりません。大げさな表現や思わず押してしまう配置で無理にクリックを集めれば、CTRは上がります。でもその人たちは買ってくれません。

実際、Meta自身も「リンククリック」より「ランディングページビュー(LPV)」を見るように推奨しています。リンククリックは押された回数ですが、LPVはページがちゃんと開かれた回数。この2つに大きな差があるなら、誤クリックか、ページの表示が遅すぎるかのどちらかです。

比べる前に:あなたが見ている「CTR」はどれ?

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

Meta広告の管理画面(広告マネージャ)には、「CTR」と名のつく指標が複数あります。どれを見ているかで数字が変わるため、これを揃えないままベンチマークと比べても意味がありません。

指標 何を数えるか 使いどころ
CTR(すべて) 広告へのあらゆるクリック 広告全体への反応を見る
CTR(リンククリックスルー率) リンクへのクリック 基本はこれ。送客力を見る
アウトバウンドCTR Metaへのクリック 自社サイトへの純粋な送客力
LPV率 ページが開かれた回数の割合 実際に読まれた送客量

「CTR(すべて)」には、リンククリック以外にアカウント名のタップ、画像の拡大、「いいね」などのリアクションまで含まれます。つまり、サイトに来ていない人のクリックも数に入っているということです。

この違いは小さくありません。同じ広告でも「すべて」と「リンク」で0.5〜1ポイント以上ずれます。CTR 1.0%という数字が「業界平均以下」に見えるか「まあ標準」に見えるかが、指標の選び方だけでひっくり返ってしまうのです。

この記事の数字はすべて「リンクCTR」です。他社のベンチマーク記事を読むときも、まずどちらの話をしているか確認してください。書いていない記事は、正直あまり信用しないほうがいいです。

「動画CTR」という指標は管理画面にはない

Metaに「動画CTR」という専用の指標があるわけではありません。広告フォーマットを「動画」で絞り込んだうえで、リンクCTRを見る——これが実務でいう動画CTRです。動画と静止画とカルーセルを混ぜたままの数字を、動画のベンチマークと比べないようにしてください。

「再生回数で割る」のはNG

よくある間違いをもうひとつ。CTRの分母はインプレッション(表示回数)であって、動画の再生回数ではありません。

「クリック ÷ 3秒再生数」で計算すると、分母が小さくなるぶん数字は大きく出ます。社内資料でこれを「CTR」と呼んでしまうと、実態より良く見える報告ができあがってしまう。独自に見たいなら「3秒視聴者クリック率」など、別の名前をつけて公式のCTRと混ぜないでください。「うちはCTR 3%あります」と言われて詳しく聞くと、この計算だった——というのは本当によくある話です。

業種別のベンチマーク一覧

数字の出どころ(ここも大事です)

動画広告だけを業種別に集計した大規模なデータは、実はそれほど多くありません。そのため下の表は、次の3つを組み合わせています。データの質が同じではないことを分かったうえで使ってください。

  1. 動画の直接データ:Billo(2025年7〜12月、販売目的の動画広告80,069本)。動画に絞った数字なので最も信頼できます
  2. 代理の数字:動画専用の数字がない業種は、WordStream/LocaliQの調査(米国554キャンペーン、2024年4月〜2025年6月)で代用。動画以外のフォーマットも含む数字です
  3. EC分野の中央値:Triple Whale(2025年通年、約35,000ブランド)。こちらもMeta広告全体で、動画限定ではありません
業種 動画CTR/代理値 中央値 主な出典
EC・小売 1.54% 2.19〜2.25% Billo/Triple Whale
B2B 1.54% 1.12〜1.37% Billo/Databox
金融 代理0.98% 0.98% WordStream(米国)
教育 代理1.45% 1.29〜1.80% WordStream/Databox/Superads
ヘルスケア 代理0.83% 0.73% WordStream/Databox
旅行・観光 代理2.76% 2.76% WordStream(米国)
エンタメ 1.87% 2.10% Billo/WordStream

「代理」は、動画だけのデータがないため他のフォーマットを含む数字で代用した、という意味です。元データの目的も地域もバラバラなので、業種同士の順位を競わせるための表ではなく、自分の業種の欄だけを見る表だと考えてください。

自分の業種の欄をどう読むか

  • EC・小売:動画で1.5%前後が標準。中央値の2%超は静止画やカルーセルを含んだ数字なので、これを動画の目標にすると厳しすぎます
  • B2B:そもそもCTRを追う商材ではありません。資料請求や商談につながったかを優先してください
  • 金融:1%前後でも不調とは限りません。規制が多く、気軽にクリックする商材でもないためです
  • 教育:入学・資格の時期で大きく動きます。資料請求型と数千円の講座は分けて見てください
  • ヘルスケア:0.7〜0.9%が現実的。詳しくは次の項目で補足します
  • 旅行・観光:景色や体験を見せるだけで魅力が伝わるため、構造的にCTRが高く出ます。2%台でも喜びすぎないこと
  • エンタメ:イベントやギフト需要で季節変動が激しく、単月では判断できません

注意:医療は「美容」と一緒にしない

Billoのデータには「Health & Beauty」というカテゴリーがあり、動画CTRは1.90%と高めです。ただしこれは化粧品や美容商材を含んだ数字。クリニックや医療サービスの目標にこれを使うと、達成不可能な数字を追いかけることになります。

医療機関に近いのは、WordStreamの「Physicians & Surgeons」0.83%、Databoxの「Health Care」0.73%のほうです。カテゴリー名が似ていても中身が違う——ベンチマークを使うときの落とし穴です。

平均値は季節で動く

全業種平均の1.56%も、1年を通して一定ではありません。Billoのデータでは、2025年7月の1.35%から12月の1.77%まで毎月上がっていきました。年末商戦やセール期はCTRが上がりやすいためです。

つまり「先月より下がった」の多くは、季節要因です。比べるなら前年の同じ月か、直近の四半期と比べてください。11月と1月を比べて焦る必要はありません。

自分の数字をどう評価し、どこまで上げるか

ベンチマークが分かったら、次は「で、うちはいくつを目指すのか」です。以下は、Billoの業種差やTriple Whaleの前年比CTR上昇率13.5%などを踏まえた計画上の目安です。保証された数字ではありませんが、無茶な目標を立てないためのブレーキとして使えます。

今のCTR 評価 1か月以内の目標 3か月後の目標
1.0%未満 低い 今の1.15〜1.3倍
(例:0.8% → 0.92〜1.04%)
今の1.3〜1.6倍
(例:0.8% → 1.04〜1.28%)
1.0〜1.6% 標準 今の1.08〜1.15倍
(例:1.2% → 1.3〜1.38%)
今の1.15〜1.3倍
(例:1.2% → 1.38〜1.56%)
1.7%以上 高い CTRは維持でOK
LPV率・CVRの改善へ
CPA・ROASの改善を優先

ポイントはいちばん下の行です。すでに業種の目安を超えているなら、CTRをさらに上げる努力はコスパが悪くなります。それより、クリックした後——ページがちゃんと開くか、内容が広告と一致しているか、購入まで進めるか——を直したほうが、売上への効果は大きくなります。

参考までに、日本市場の公開事例では、耳栓ブランドLoop EarplugsがMeta広告のクリエイティブと広告文を継続的にテストし、CTRが前月比で平均11.27%向上、ROASが平均31.10%向上したと報告されています(元のCTRの絶対値や予算は非公開)。普通に運用しているアカウントで現実的に狙える改善幅は、1か月で10〜15%程度と考えておくのが安全です。CTR1.20%なら1.32〜1.38%くらい。「1か月で1.5倍にします」という前提の予算計画は、元の動画によほど問題がある場合を除いて楽観的すぎます。

逆に「作り直し」レベルで手を入れた場合は、もっと大きく動くこともあります。ただしCTR 0.6%が0.98%になっても「63%向上」です。改善率だけでなく、改善後の絶対値を必ず確認してください。

低いと分かったら、どこから直すか

この記事の役割は判定までなので、改善の中身は別記事に譲ります。優先順位だけ書いておくと、計測の統一 → 冒頭3秒 → 縦型・無音対応 → 訴求のテストの順です。

ありがちな失敗が、CTRが低いのにいきなりLPを作り直すこと。クリックされる前の問題は、クリックした後のページを直しても解決しません。

判断を間違えないための3つのルール

ルール1:CTRが下がった=動画が悪い、とは限らない

冒頭で触れたとおり、インプレッションは「人数」ではなく「回数」です。同じ人に何度も表示されれば、当然クリックされる確率は下がります。CTRが下がったら、まず頻度(フリークエンシー)を見てください。頻度が上がっているなら、動画の質ではなく見せすぎが原因です。

ルール2:目的や指標が違う数字を混ぜない

WordStream/LocaliQの2025年調査では、全業種のCTRがトラフィック目的1.71%、リード目的2.59%と、キャンペーン目的によってはっきり違いました。目的が違えば配信される相手も変わるので、目的をまたいだCTR比較には意味がありません。

同じことが再生指標にも言えます。Metaには「2秒連続再生」「3秒再生」「ThruPlay」など数え方の違う指標があります。細かい定義を覚える必要はありませんが、数え方が違う指標を同じ「視聴率」として並べないこと。レポートには、どの指標を使ったか必ず書き添えてください。

ルール3:少ない表示回数で勝敗を決めない

CTRが1%の広告では、1,000回表示されてもクリックは約10回です。10回と13回の差は、単なる偶然でも起こります。それを「Bのほうが30%良い」と判断してBに予算を寄せてしまう——これはかなり頻繁に起きています。

目安として、1パターンあたり最低でも2〜3万回の表示は欲しいところです(CTR1.5%で20%の差を見分けるなら約28,300回)。小さい差ほど大量の表示が必要になります。数百回で止めた判断は、ほぼ運です。テストの設計は動画広告のABテスト設計にまとめています。

そして最も大事な原則。「CTRは上がったけどCPAが悪化した」なら、それは勝ちパターンではありません。クリックを増やすことと、良いお客様を増やすことは、しばしばトレードオフになります。

参考:自社実績を外部平均と比べてはいけない例

私たちpitattoが制作した不動産の動画広告は、CTR 10.04% / CPC ¥18 という実績が出ています。ただしこれは特定アカウントでの配信実績で、期間・キャンペーンの目的・ターゲット・地域といった集計条件が、この記事で紹介した外部ベンチマークと揃っていません。

この記事でさんざん「条件を揃えずに比べるな」と書いてきた以上、自社の数字だけ例外にはできません。ですので「業界平均1.5%に対して10%出ます」という話ではなく、同じアカウント・同じ商材で、動画を入れ替えたらここまで動いたという一例として見てください。

アニメ調
CTR10.04%・CPC¥18を記録したアニメ調の広告動画。冒頭で誰の・何の話かが分かる設計にしています

まとめ:明日から使える基準

業種 まず置く目標 補足
全業種の出発点 1.5%前後 販売目的の動画広告の平均は1.56%
EC・B2C 1.3〜1.9% 2%超なら良好。カテゴリー差が大きい
B2B 1.0〜1.6% CTRより商談数・商談単価を重視
金融・医療 0.7〜1.2% 1%未満でもCVR・CPAが良ければ問題なし
旅行・エンタメ 1.8〜2.8% 元々高く出る業種。基準も高めに置く

そして、この記事でいちばん覚えて帰ってほしいことを繰り返します。

外部の平均値を、最終的なゴールにしないでください。

外部のベンチマークが役に立つのは、始めたばかりで自分の位置が分からないときと、「これは明らかにおかしい」という異常に気づくときです。しかし本当に必要なのは、自社アカウントの数字を、新規/既存・目的・配置・季節・商材ごとに記録し続けること。3か月も貯めれば、どんな外部データより正確な「自社の物差し」ができあがります。

この記事の表は、その1枚目ができるまでの仮の地図として使ってください。

参考にした出典

  • Meta Business Help Center「CTR (link click-through rate)」— リンクCTRの公式定義
  • Meta Business Help Center「Know The Difference Between “Clicks (All)” and “Link Clicks”」— クリック定義の違い
  • Meta Business Help Center「About video ad metrics」「Impressions」「About 2-second continuous video plays」— 動画再生・インプレッションの定義
  • Meta Business Help Center「About A/B Testing」「About confidence in your tests and experiments」— テスト設計と信頼度
  • Billo「Video Ad CTR Benchmarks 2025」— 販売目的の動画広告80,069本の業種別平均
  • Triple Whale「Facebook Ad Benchmarks by Industry」— 約35,000ブランド、2025年通年のMeta広告中央値
  • WordStream/LocaliQ「Facebook Ads Benchmarks 2025」— 米国のトラフィック・リード目的の業種別中央値
  • Databox「Facebook Ads Benchmarks by Industry」/Superads「Facebook Ads CTR Benchmarks for Education」— 業種別中央値の補完
  • Humble Bunny「Japanese B2C Meta Ads Case Study: Loop Earplugs」— 日本市場でCTR月次平均11.27%向上